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京成杯AH

  • 2013年09月09日(月) 18時00分
 メインの前後には雨が降ったものの、馬場状態にはほとんど雨の影響なし。初秋の高速マイル重賞らしい「1分31秒8」の勝ちタイムが記録された。

 横山和生騎手のルナ(父クロフネ)がすんなり先手を取るなら、昨年のような厳しい流れ「45秒1-45秒6」=1分30秒7はありえない。そんな展開の読みもあってルナの人気が高まった。また、素晴らしい状態だったから、最終的に1番人気は納得。ところが、初重賞挑戦の同馬に、きつい洗礼が待っていた。出負け。他の先行型は好スタート。少しのスキも許されない高速決着の重賞はみんなが承知である。そこから出足をつけ、先頭に立ちかけた外の丸山元気騎手のテイエムオオタカ(父ホワイトマズル)をかわして行くしかなくなってしまった。

 仮にもっと強引にハナを主張したなら、このペースだからテイエムオオタカの丸山騎手は早めにハナをゆずったかもしれないが、先手を取るのが理想とはいえ、下級条件の1200mではない。ペース無視のなにがなんでもの先手主張は重賞の1番人気馬にふさわしくない。途中でテイエムオオタカは2番手に下げてくれたものの、ときすでに遅し。前半の半マイルまで、昨年と同様の「12秒6-10秒6-10秒8-11秒2…」=45秒2になってしまった(レースの後半は46秒6)。1000m通過は56秒7。きびしいハイペースである。昨年、同様のペースで先行したゼロス、スペシャルハートは13着と15着に沈んでいる。10着に沈んだルナはこの流れを作っては仕方のない結果だった。「45秒2-47秒7」=1分32秒9なら悪くはない。ただ、昨秋の中山で3着の1分32秒5は、「45秒4-47秒1」。今春の1分32秒8は「46秒5-46秒3」。マイルで前半がきついと同じように止まるから、本当は平均ペースの1800m向きか。

 エクセラントカーヴ(父ダイワメジャー)は、当日輸送で8キロ減の馬体重だったが、まさにピーク。このあとが心配になるくらいのすごい状態。行きたがっているのではないかとも思えるほどの行きっぷりで好位の外。2走前の東京1600mを、前半「57秒9」の通過で1分32秒3を記録していたから、そっくり同じ自身の1000m通過「57秒9」は無理のない追走だった。今回の上がりは33秒9-11秒7。楽に抜け出して初重賞制覇となった。3代母オールドスタッフ(父アイリッシュリヴァー)は、先日の新潟2歳Sを驚異の末脚で楽勝したハープスターの祖母ベガ(父トニービン)の半姉という、アンティックヴァリューのファミリー。成長して小柄な馬体に芯が入り、もうトップクラスに加わったとしていい。

 戸崎圭太騎手とは【4-1-0-1】。公営出身でも、必ずしも追わせる迫力の騎乗というタイプではない戸崎騎手に、高速レース、軽ハンデ、自在型の牝馬はもっとも合っているように思える。ただ、絶賛の回顧コーナーではないから、あえて心配な点を挙げるなら、これで1000万下から4連勝。あまりにも今回のデキが良すぎたこと。マイルを高速タイムで激走したことを考えると、このあとの展望は大きく広がるだけに、逆に心配は生じる。昨年、1分30秒7のレオアクティブは、1番人気になったスワンSを9着。1分30秒9で2着したスマイルジャックは、毎日王冠を13着。3着のスピリタスは富士S5着。4着のコスモセンサーは、その富士Sを1番人気で8着など、このあとのビッグレース挑戦は、慎重なレース選択と間隔が求められることになる。

 そのレオアクティブは、昨年より3キロ増の57キロ。自身も動いてはいたが調教でルナに見劣るなど、昨年の状態にはなかった。こじんまり映った。狙ったインが昨年のようには開かなかったというより、惜しい3着、惜しい3着、の連続でピーク過ぎだったかもしれない。

 2着ダノンシャーク(父ディープインパクト)は、1分31秒6で3着の安田記念からの休み明け。背負い頭の58キロできちっと伸びて1分32秒0。さすがだった。まだ制した重賞は今年の京都金杯(57キロ)だけだが、ここまで重賞12戦、すべて0秒5差以内に押し上げている。このあとも安定した底力発揮だろう。いつも2-4着馬のイメージからもう脱したい。

 善戦にとどまった組では、3歳ゴットフリート(父ローエングリン)の早め早めに動きながらの1分32秒4の3着は立派。春後半のスランプは脱し、前進あるのみである。

 同じ3歳のインパルスヒーロー(父クロフネ)は、コーナーではあまり感じなかったが、レース再生をみると直線でささり気味。やはり初の右回りが死角となった。

 印象的で、重要度で上回る「セントウルS」は、みんなの予測通りマッチレースだった。

 2着にとどまったロードカナロア(父キングカメハメハ)には、ささやかれていた死角である「最近10年、セントウルSとスプリンターズSの連勝はない。58キロ以上で勝った馬はいない(つまり、GI馬は勝っていない)。7-8月に使っていない休み明けの馬は勝ったことがない。新阪神になった1200mは過去6年、勝ちタイム平均1分07秒67(33秒65-34秒02)の落ち着いた流れで、差す馬は不利」。パターンを重んじるファンの考えた通りになってしまった。

 ハクサンムーン(父アドマイヤムーン)が強くなっているのは分かっているから、いつもより早めにスパートしたが、例年よりもっと楽なペース(33秒8-33秒7)=1分07秒5に追撃及ばずとなった。ここはしかし、逃げ馬とは思えない再加速「後半11秒0-10秒8-11秒8」を決めたハクサンムーンを称えるべきだろう。馬場入りの際の回転クセも少なかった。

 教訓。ロードカナロアは衆目一致のチャンピオンである。しかし、口がすべっても「もう、負けない」とか、「あと、○○と▽▽を勝って引退する」などと言ってはいけない。たとえ、自陣営を鼓舞するためであっても。チャンピオンは、かつて自分も負けたからこそ、勝負の怖さをいやというほど知ることによりチャンピオンになったはずあり、わざわざ相手に牙をむかせ、闘志に火を注ぐ必要はどこにもない。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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