今年のオールカマーは、なんとも味わい深いレースになった。
出馬表を一目見たとき、これは嫌なレースだという感触を覚えた。というのも、1番人気のダノンバラードが切りにくいからだ。
GI宝塚記念激走直後のレースなら危ない人気馬だが、疲れやすいディープインパクト産駒の休み明けだ。リフレッシュして疲労が取れているだろうから、休み明けでは狙いを下げる理由はない。
しかも中山2200mは、古馬になって唯一の重賞勝ちであるAJCCと全く同じ舞台。
ディープインパクト産駒にしては、ある程度上がりが掛かった方が良いタイプで、中山の2200mはちょうど良い舞台設定になるのだ。
また、ディープインパクト産駒の初年度から解説しているように、比較的S質の強いタイプの方が長く走りやすい傾向にある。そういった意味では、こういう上がりが掛かると良いタイプは、息が長い走りをする確率が高まると考えて良いだろう。
それが、どちらかというと早い時期にピークを迎えやすいディープインパクト産駒には珍しく、5歳でGII初勝利を挙げた所以でもある。となると、5歳秋になったからといって、それほどパフォーマンスが落ちることもないだろう。
以上から切る材料が少ない1番人気で、馬券的には興味が失せるタイプのレースになる。
ただ、それでも少し気になる点があった。
間隔を開けたとはいえ、古馬になっての初GI挑戦という鮮度を活かして宝塚記念を2着に激走した後だ。肉体的なダメージはないにしても、疲れやすいディープインパクト産駒の精神的なダメージが、その直後のレースで取れているかは微妙である。S質が強いと心身が硬くなりやすい傾向にあるので、余計に気にはなる。少なくとも、激走後に一回はレースを使って、激走の記憶を遠ざけた方が、精神的な余裕は生まれやすいのだ。
ただ、困ったことに他に買いたい人気馬もいない。
メイショウナルトは中6週開けたとはいえ、格上挑戦の鮮度で重賞をレコード勝ちした直後のハーツクライ産駒だ。疲れがないといえば嘘になるだろう(最終的に私はこの馬を選ぶのだが、それはまた後で解説する)。
ムスカテールは前走GII勝ちの疲れを休みで抜いてリフレッシュし、内枠も得意。単勝6.6倍なら期待値的に飛びつきたくなる。ただ、前走東京の長距離2500mを追い込んで好走しているのが気掛かりだ。オールカマーはタイトな流れになりやすい中山2200mで行われる。
しかも、秋競馬開幕間もない上に、今週からCコースの開幕で馬場が良い。ある程度強引に動いて押し切るような競馬が必要になってくる。となると、前走東京の長距離を追い込んで好走したような馬では、活性化率が低くて、レースが終わった頃にエンジンが掛かる可能性を否定できない。
ここ5走で好走したのは、差した4レースだったのも気掛かりだ。
これはもちろん、「中山で前残りになるかもしれない」とかいった理由ではない。今回仮に差し競馬になったとしても、長距離を差して好走し続けているのは、活性化を要求されるレースにおいては良くないのだ。
好走しているときが常に長距離の差しでは、特にコース開幕の中山2200mでは、やや活性化レベルが低いということである。
また、差して好走していること以上に、同馬のステップで引っ掛かることがあった。それは、ここ5戦全てで2400m以上を使ってきたことである。馬が緩いレースの連続で、まどろんでいる状態だ。
これでいつも差している完全な差し馬なら無条件で危ないが、最後に2200m以下を使った新潟記念2000mでは多頭数を先行しているし、2走前にはGIを先行している。このことはプラスだ。
特に、2走前にGIを先行して惨敗しているのは良いステップだ。
厳しい競馬になりやすいGIを先行しているので活性化材料になるし、惨敗しているので疲労も残らない(その先行した活性化のお陰で、次走目黒記念を差しの位置取りショックで勝てたわけで、GI先行のアドバンテージは前走の差し切りであらかた使い切ったとも言えるが)
今回のレースにおける活性化率は低いが、潜在的な活性可能性はそれなりに高い状態を維持している馬ともいえる(だからこそ、近走で何度も好走しているわけだが)。
以上、休み明け、内枠というプラス材料、ステップによる非活性化というマイナス材料と、6.6倍という人気を考えると、バランス的には相手の一頭が妥当だろう。
評価しないわけにはいかないが、勝てるイメージというと、あまり湧いてこない。
つづく
※M3タイプ
S(闘争心)
闘争心を持つ馬。1本調子に走ろうとする性質。このタイプは気性をコントロールするために、短縮などのショック療法が有効。生涯に1度の絶頂期には、あらゆる条件を飛び越しで走ろうとするが、それを過ぎると極めて不安定になる。Sの由来は闘争を表す「Struggle」の頭文字から。
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※正誤表が
競馬王ブログに掲載されています。