前回、ハクサンムーンに振り切られて負けたロードカナロアが、チャンピオンの名誉を取り戻すことができるか? 肉迫できそうな馬はいるのか?
前回のロードカナロアは、負けるべくして負けた。というのは言い過ぎに思えるが、多くのファンが「もし、負けるとしたら、こんな形だろう」と推測した通りの内容で負けたから、負けるべくして2着は、実は否定できない事実なのである。
いろんな検討コーナーにあったように、コース形態からして、阪神の1200mが[33秒8-33秒7]=1分07秒5のバランスで決着したのは、まったくいつものパターン通りだった。そういう前後半バランスになるケースが、再三再四である。もっと後半が速いケースも珍しくない。
ハクサンムーンの快走は、粘ったCBC賞[34秒2-33秒8]も、初重賞制覇となった京阪杯[34秒3-34秒2]にしても、高松宮記念[34秒3-34秒0]も、決まって後半のほうが速い形がパターン。5走前のオーシャンSのように前傾バランスになると失速の危険が大きくなる。
そこで、セントウルSを勝ったハクサンムーンは、阪神コースの短距離戦を4戦4勝である。
ロードカナロア陣営もそれは分かっていたから、ロードカナロアはいつもよりずっと前につけたが、記録した自身の1分07秒5は、残念ながら[34秒1-33秒4]。ハクサンムーンに3コーナーあたりで並びかけないと、当然のように後半加速するハクサンムーンを捕まえるのは無理だったことを、数字が示している。2キロ重い58キロ、休み明けで完調には一歩は分かっていて、早めに捕まえに出たつもりでも、実際には楽に行かせ過ぎていた。そこで、岩田騎手は納得できない顔に終始したのである。
ハクサンムーンは、予測以上に強くなっている。粘り込む先行型ではない。さらには、時計を振り返えるならいやでも理解できる数字が、早めに行ったつもりでロードカナロア自身の前半は34秒1。9月の快速重賞とすれば、未勝利-500万クラスの前半だったことに愕然としたのだろう。
中山1200mのG1は、しかし、前半が下り坂にも近い。黙っていても前傾ラップが刻まれるのがパターン。
この10年間のスプリンターズSでは、最大3秒2、最小でも0秒8前半3ハロンのほうが速く、平均すると[1秒73]前半が速い。コースレコードの昨年も[1秒3]は前半が速い「32秒7-34秒0」だった。
むしろ心配は、逃げ宣言のフォーエバーマークを、二の足のついたハクサンムーンが早めに捕まえに出て、ロードカナロアまで、33秒そこそこで追走してしまわないかである。今年より芝状態の良かった昨年のロードカナロアは、「33秒3-33秒4」=1分06秒7だった。あわてなくとも、中山なら大丈夫。芝状態から今年の推定勝ちタイムは1分07秒1-2前後ではないかと思える。いつものリズム通りで、1分07秒1-2前後でロードカナロアが乗り切るのは、いともたやすいことである。
もっとも怖い相手は、グランプリボス(父サクラバクシンオー)だろう。厳しいレースになるほど、マイルG1を2勝している総合スピード能力が生きてくる。今春の安田記念こそリズムを崩して1分32秒2にとどまったが、昨年の安田記念は1分31秒3で乗り切っている。体調の変動の大きいタイプだが、イギリス遠征の後は別に、全力を出し切って厳しいマイル戦を走り過ぎてしまうからではないか、とも考えられる。サクラバクシンオーに、サンデーサイレンスの組み合わせ。快速重賞は望むところだろう。過去のスプリンターズSの勝ち馬が示してきたように、1200mは初めてでも、マイルのG1を勝ち負けできる総合スピードを秘めた馬なら、中山の前傾ラップになるスプリンターズS好走は少しも難しくない。阪神や、京都の1200mではないからである。
前傾ラップになるほど可能性が出てくるのは、昨年、苦しい位置どりになりながら、1分06秒9で乗り切って3着に突っ込んでいるドリームバレンチノか。ハクサンムーンとはまったく逆パターンを好むスプリンターと思える。
断然人気のロードカナロアを中心にしたから、相手は絞らなくてはならない。穴馬は、ブリンカーを装着してタメるかは疑問だが、行き脚がつかずに控える形になった際のサクラゴスペル。