ハイペース激戦になったときのMのポイントの続きである。
今週はスワンSを当てたのだが、このレースも極めてM的だった。
記憶が新しいうちに、ちょっとそれを振り返ってから、先週の続きをしようと思う。
スワンSはダイワメジャー産駒のワンツーだった。
ダイワメジャー産駒の狙い方は分かりやすい。「疲れていないときの、ちょっとした混戦」が一番のツボになる。
そうなるとダイワマッジョーレは最高の狙いだ。
休み明けで疲労がないし、1600m以上を中心に使われて、1400m以下を走るのは今回がまだ2回目。
1400mに対しての鮮度が高いし、1600m以上が中心だったので、ダイワマッジョーレにとっては、1400mのGIIは体感的に「混戦」に感じるはずだ。
しかも今回は前に行くメンバーが揃っているので、よりペースは厳しくなりそうなのも、疲労がないときはタフなレースを走れるダイワメジャー産駒にはピッタリである。
ただ、鮮度が高いということは、裏を返せば経験がないことにもなる。いつでも、この経験と鮮度のバランスは重要なテーマになってくる。
ダイワマッジョーレの場合は一度だけ経験した1400mがハイペースだったこと、今回が少頭数なので仮に速い流れになっても対応が遅れて前半馬群に飲み込まれ、脚を余すリスクが少ないことから、経験不足は問題にならないと判断した。
同じダイワメジャー産駒コパノリチャードは、16着惨敗後で、やはり疲労がないのはプラスだ。
ダイワメジャー産駒は変わり身指数が高く(11月に発売される今年度版血統辞典では52)、巻き返せるタイプなのもプラス。
ただ、行く馬が多いメンバーなのでハナを切れるかどうか、切れたとしても前崩れの流れになる恐れがある。
そこで相手の1頭評価に止めた。
レースは、激しいハナ争いを演じる予定だったもう一頭のエーシントップが出遅れたことで、案外楽に逃げられたため、そのまま残って1着。
ダイワマッジョーレが差して2着で、馬連67倍は5点目という結果に終わった。
実は3着に激走した10番人気サダムパテックの方を馬連の2点目と高く評価していたので、エーシントップが出遅れず、激しいハナ争いをして、ズブズブの差し決着になってくれた方が良かったのだった。
そうすれば、馬連97倍が2点目、上手くいけば馬単万馬券も2点目的中だったわけだが、相手の出遅れまでは読めなかったので、仕方ないだろう。
このように、ダイワメジャー産駒は、メジャー種牡馬の中では一番疲労に敏感なので、それを利用して切ったり買ったりしやすい、馬券になる種牡馬である。
もう1レース、気になったレースが先週あったので、ちょっと見てみよう。
準OPの轟Sという、日曜新潟メインで行われた直線レースだ。
直線競馬はこの連載で何度も触れてきたように、直線だけの1000mという単純化された形態が、ドラスティックに競馬というものの本質を見せてくれることが多く、興味深いのでよく予想している。
その結果の如何に関わらず、競馬の奥底にある何かに触れたようで、競馬が終わった後にゾクッとさせられることが多いのだ。
このあいだの『競馬王』で、直線競馬は直線鮮度と、ダートなどタフなレースを走っている馬を狙えと、いつもの直線のポイントを改めて書いた。
鮮度と、ダートなどS質の経験が有効なのが、直線競馬だというのは、直線競馬が始まって以来、ずっと解説し続けたことである。
で、轟Sだが、本命は全く悩まなかった。
2走前に重賞4着で、前走が自己条件を7着。
重賞で頑張った後に、そのストレスで凡走し、今回は1000m→1200m→1000mのバウンド短縮。Mの教科書のような馬だ。
一番人気の可能性が比較的高く、勝負レースでは滅多に一番人気を本命にしない私だが、ステップが良すぎて好走確率が高すぎるのと、割れた一番人気で単勝は結構付くので構わないだろうという判断で、本命にしたのだった。
加えて、人気を分け合うであろうレモンチャンが怪しかったのだ。
前走初の直線レースの、しかも昇級戦をいきなり勝ったので、「2戦目で慣れの見込める今回は更に」ということで、人気を集めていた馬だ。
だが、いきなり勝ったことが、何のプラス要素でもないことは、何回も今まで説明してきた。
むしろ、初めての方が有利だ。
そして実際、私は前走ではレモンチャンを本命にしていた。
もちろん、「初の直線競馬で格上げ戦」だったからに他ならない。これだけ鮮度が高ければ、直線競馬では圧倒的に有利だ。
問題は経験のなさだが、3走前までダートの厳しい競馬をしてきたことで十分カバーできる。それだけでなく、新潟競馬場の経験も以前にあり、かつ前走は芝のハイペースも経験した。
これほど多様で、今回に有利な経験を重ねながら、鮮度の高い馬など、そうそういるものでもない。
で、今回だ。
ショック激走後のストレスがある上に、前走と同じ直線競馬。挙げ句に前走の4番人気から、1番人気を分け合う人気では、期待値が低い。
そこで、今回は前走の本命から一転、5番手評価に落とした。
対抗にしたのは7番人気ローブドヴルール。前走ダートの短距離を先行しているという、直線競馬では特に重要な、S質の活性化が施されている馬だ。
それでいて、以前に直線競馬を経験しているので、戸惑いを覚えることもない。
レースでは狙い通り、レオパステルが余裕の勝利。期待した通りに、直線競馬でこの日一番伸びる、大外過ぎない外寄りの中目を、枠なりに走ったのも正解だった(大外に出していたら、あるいは2、3着だったかもしれない)。
が、2着が微妙だった。対抗のローブドヴルールを含む、3頭の写真判定になったのだ。
3頭とも相手に選んでいたので、どれでもよかったのだが、もちろん対抗のローブドヴルールを一番厚めに張っていた。
写真判定の末、10番人気トーセントレジャーが2着。馬単万馬券が当たったが、1点目ではなく、5点目での的中になってしまった。
この10番人気で2着に激走したトーセントレジャーは、ずっとダートを使って活性化されてきた馬だ。
デビュー戦で芝を使って惨敗した後、29戦ダートを使って、新馬以来久々の芝レースとなったのが、今回だったのだ。
まさに鮮度MAXである。
2走前に中山ダート1200mを逃げているのも良い。芝スタートで、かつタフな中山ダート1200mを、逃げられるだけのダッシュ力と、活性化があれば、直線競馬で戸惑うこともない。
終わってみればこの10番人気を対抗にすべきレースだったかもしれない。
前走の11着惨敗が調子落ちかと気になったのと、唯一経験した芝の新馬戦で勝ち馬と3秒差に惨敗していたこと。
それらが気になって、この10番人気を押さえにして、直線適性がある程度あることが分かっている7番人気ローブドヴルールを対抗にしてしまったというわけだ。
鮮度とステップの大切さ、そしてその恐ろしさを今回も思い知らされる、直線競馬らしい、またしても実にぞっとする結末に終わったのだった。
と、いろいろ書いているうちに、先週の続きを書くスペースがなくなってしまったので、また次週以降に回すことにする。
※M3タイプ
S(闘争心)
闘争心を持つ馬。1本調子に走ろうとする性質。このタイプは気性をコントロールするために、短縮などのショック療法が有効。生涯に1度の絶頂期には、あらゆる条件を飛び越しで走ろうとするが、それを過ぎると極めて不安定になる。Sの由来は闘争を表す「Struggle」の頭文字から。
C(集中力)
集中力を持つ馬。集中して他馬との相手関係の中で走ろうとする性質を持つ。レース間隔を詰めたり、体重を絞ったり、内枠、ハイペース、強い相手との競馬など、摩擦の多い状況を得意とする。Cの由来は「Concentration」の頭文字から。
L(淡泊さ)
淡泊さを持つ馬。自分のペースで淡々と走ろうとするタイプの馬で、距離の延長や少頭数、広いコース、外枠、弱い相手との競馬が有効。Lの由来は「Light」の頭文字から。
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※正誤表が
競馬王ブログに掲載されています。