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超混戦のマイルCS

  • 2013年11月15日(金) 18時00分
 主役なきマイルCS、である。

 金曜13時頃のnetkeibaにおける予想オッズではダノンシャークが1番人気だったが、同馬とてこれまであまり本番にはつながらないできた富士Sの勝ち馬。安田記念3着はあるが、昨年のこのレースは6着。もちろん有力候補の1頭ではあるが、絶対と言える存在でもないし、人気が上昇する局面で買うのはオッズ的においしくはない。

 ならばどの馬が良いのかと言われると、それはそれで困ってしまう。

 本来、マイルCSで良いのは天皇賞秋から距離短縮で来る馬だが、今回は該当馬がいない。「本当なら天皇賞に出ていたはず」というのはダークシャドウで、これは一考に値する選択肢ではある。6歳という年齢はこのレースにおいては厳しいものだが、マイルだとスローに殺される心配はない。

 毎日王冠から来るクラレントも臨戦過程としては良い。ただ前走でスローを経験してきたことがこでどう影響するかは気になる。

 中長距離路線から来たという意味ではトーセンラーも有力だ。菊花賞3着や天皇賞春2着があるためにマイルで二の足を踏んでしまうファンも多いだろうが、3歳秋の時点ではむしろ距離不安を言われていた馬。前半置かれすぎるとしんどいが、流れに乗れれば勝ち切るシーンまでありうる。

 スワンS組はどうか。コパノリチャードは今回好枠を引いたが、さすがに前走ほど楽な競馬はさせてもらえないだろう。古馬との斤量差も小さくなるし、過去の3歳馬はそれで苦戦してることが多い。

 馬券的な妙味ということでは2着だったダイワマッジョーレは、中距離タイプということでは面白いかもしれない。ただ安田記念が示すようにG1では本質的に足りない危険もある。

 昨年のこのレースで◎にしたサダムパテックは復調の兆しが見えたという意味ではスワンS3着は良かったが、昨年は天皇賞からという理想的なローテだったので、当時ほどの魅力は感じられない。

 他に上位人気の一角というと、グランプリボスあたりか。何度も復活してくる馬だけに、確かに怖い1頭ではある。ただ、1200→1400と使ってしかも負けてくるというのはあまり良くないステップ。名前のある馬だけに過剰人気になっていないかオッズと相談したい。

 カレンブラックヒルはぶっつけになることと安田記念の印象が良くないようだが、時計の対応力がない馬なので1分31秒台の安田記念はどのみち無理。しかも先行馬総崩れのレースだった。斤量を余分に背負っていたマイラーズCの結果を考えると、ここで全く足りないということもないだろう。肉体的にはむしろ3歳時より成長しているが、精神的には確かにズブくなっている。そこを岩田騎手で補えるかどうかがカギ。

 正直に言って、泥仕合に近いメンバー構成で行われるG1である。どれが勝っても、どれが大敗しても不思議はない。結果が出ると来た馬がやたらと称賛されて沈んだ馬がやたらと貶められるのだろうが、もう一度やったら立場が逆転するほうが自然なほど。その意味で、いま評価が下がっている馬の中にまだ可能性のある馬がいないか、そちらに目を配りたい。

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1970年東京生まれ。競馬評論家、ギャンブル評論家。中学生時代にミスターシービーをきっかけとして競馬に興味を持ち、1990年・大学在学中に「競馬ダントツ読本」(宝島社)でライターとしてデビュー。以来、競馬やギャンブルに関する著述を各種媒体で行うほか、テレビ・ラジオ・イベントの構成・出演も手掛ける。競馬予想に期待値という概念を持ち込み回収率こそが大切という考え方を早くより提唱したほか、ペーバーオーナーゲーム(POG)の専門書をはじめて執筆・プロデュースし、ブームの先駆けとなった。

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