坂路小屋で“前哨戦”主導権争いを制するのは/トレセン発秘話
◆宮本調教師が「ウチのがハナに行きますよ」
牡馬クラシックの勢力図が一向に見えないまま2014年を迎えた。そうした情勢を反映してか、年明け早々、3歳オープンのレースは慌ただしいものとなっている。
日曜のシンザン記念には2歳マイル戦のレコードホルダーで、前走のひいらぎ賞でも朝日杯FSを0秒5上回るタイムで駆け抜けたミッキーアイルがエントリー。ほかにも朝日杯3着馬ウインフルブルーム、ラジオNIKKEI杯2歳S5着馬タガノグランパ、万両賞を制したモーリスが加わるなど、春を嘱望される素質馬たちが早くも激突する。
本来なら有力馬は休養に充ててトライアルに備え、そうでない馬たちは必死になって賞金加算を狙う時期。ミッキーアイルのような馬もその手のローテを取っていいはずなのだが…。
現3歳牡馬は朝日杯の覇者である関東のアジアエクスプレスこそ4400万円の賞金を稼いでいるものの、関西ではラジオNIKKEI杯2歳Sを制したワンアンドオンリーの2000万円が最高。西でこれに続くのはシンザン記念にエントリーしたものの、基本的にはダート路線を歩むニシケンモノノフ(1990万円)、そしてスザク(1510万円)あたりで、いわゆるクラシック候補と呼ばれる馬たちはその後の1150万円に集中。皐月賞、ダービーのボーダーラインを思えば微妙な稼ぎとなっている。
この状況に危機感を募らせているのがミッキーアイルを管理する音無調教師。朝日杯で抽選除外の憂き目に遭っているだけに「早いうちに賞金を稼いで、どこでも使えるようにしておきたい」と今回のエントリーの意図を明かしてくれた。もちろん他陣営とて同じこと。ウインフルブルームは朝日杯で賞金加算となる2着をわずかクビ差で逃しただけに、ここに懸ける思いもひとしお。実際、早くもこの両陣営は“水面下のバトル”を展開しており、音無師が普段調教を見守る坂路小屋の2階ではこんなやり取りがあったという。
「この前、ここに(ウインフルブルームの)宮本(調教師)が珍しく来てさ。“ウチのがハナに行きますよ”って、わざわざ言い残していったんだ。まあ、あいつのことだし、そう気にしてないんだけどさ」(音無師)
とは言うものの、ともにスピードを生かしたいタイプ。「ジョッキーに任せるつもりだけど、こっちがハナに行くにしても、競られる形になるとどうか。そこだけだよな」と“けん制球”を実は気にしているようだ。
激しい主導権争いをどちらが制するのか、それともハイペースを味方に伏兵の台頭があるのか。いずれにせよ、シンザン記念がクラシックを占う意味で重要な一戦になるのは間違いない。
ちなみに例年なら“空き巣”と呼ばれる京成杯(19日=中山芝内2000メートル)にはキングズオブザサン、デリッツァリモーネ、ピオネロ、プレイアンドリアル、ヴォルシェーブ、ラングレーが、オープン特別の若駒S(25日=京都芝内2000メートル)にもトゥザワールド、モンドシャルナといった有力馬が出走予定。この時期にどのレースも有力馬同士の潰し合いとなるのはもったいない気もするが、それほど牡馬クラシック戦線は現状、混戦の様相を呈している。他に先んじて一歩前に出るためには、この激戦を制する他に手はない。
一方で激流の合間を縫って、しなやかに頂点を目指そうとしている馬もいる。それが暮れの中京で新馬勝ちを決めた山内厩舎の“秘蔵っ子”ヤマノウィザード。次回はこの馬にスポットを当てる。
(栗東の坂路野郎・高岡功)
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