2009年の中山グランドジャンプ(J.GI)他、京都ジャンプS(J.GIII)、東京ハイジャンプ、京都ハイジャンプ(いずれもJ.GII)に優勝した名ジャンパー・スプリングゲント(牡14)が、昨年暮れの中山大障害(J.GI、11着)を最後に現役を引退した。
その後は、千葉県成田市の高橋牧場でレースの疲れを癒していたが、1月11日(土)に茨城県稲敷郡阿見町にある「ホースライディングスクウェア エボルブルス」に移動し、本格的に第二の馬生を歩み始めた。
エボルブエルスを訪ねたのは、移動翌日の12日(日)の午後。熱心なファンからプレゼントされた馬服を身にまとい、スプリングゲントは放牧地で笹の葉を食べていた。しかし、突然の訪問者に気が付くと、顔を上げてこちらを見た。その瞳には力がみなぎり、凛とした雰囲気が伝わってくる。
「馬運車を降りてきた直後は駈歩になって元気一杯でしたが、1日で落ち着きました。慣れていない馬は、笹を枝ごと引きずって歩いたりすると怖がるのですが、ゲンちゃんは最初から怖がらず、すぐに気に入ったみたいです。現役生活が長かったので、その間に笹にも出会ったことがあるのかな? と思ったほどです(笑)」
と、エボルブルスの仙波恵美さんの言葉通り、スプリングゲントはかなり笹の葉にかなりご執心の様子で、黙々と食べ続けていた。
ひとしきり笹を食べた後は、エボルブルス・専務の萩原克庸さんと馬場に向かい、調馬索運動。時々「ブヒヒヒーン」と力強い雄叫びを挙げながら、駆け回っている。
「競走馬上がりの馬が来ると、3日くらいは恐竜がいるみたいですよ(笑)」と、場内に響き渡る雄叫びを聞きながら、仙波さんは楽しそうに笑っていた。
球節がモヤモヤしているということもあり、蹄鉄を装着せずに裸足でしばらくのんびりする予定だという。
「まだ来たばかりですからね。様子を見て、もう少し落ち着いてきたら去勢をするつもりです。その後に脚元に合った削蹄をしてもらって、蹄鉄を履かせようと思います」と萩原さん。
ゲントの印象を聞いてみると「13歳まで現役で走っていただけあって、カン性が強いですね。牝馬を見て立ち上がった時に、ガンと手綱を引っ張って怒ると、普通の馬ならシュンとするのですが、ゲンちゃんは『何が悪いの?』っていう感じです」(萩原さん)。さすがはGI馬、自分の意志をしっかり持っているようだ。
エボルブルスにやって来たばかりだが、既に「ゲンちゃん」と呼ばれて可愛がられているスプリングゲント。しばしのんびりした後は「乗馬として調教をしていければ」と、仙波さんは今後の展望を教えてくれた。カン性が強いゲンちゃんが、果たしてどのような乗馬になっていくのか。これからも注目していくつもりだ。(取材・写真:佐々木祥恵)
※ホースライディングスクウェア エボルブルス は見学可能です。(1997年シリウスS、1998年中京記念に優勝したトーヨーレインボーもいます)
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