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フロックではないが、レベルには疑問が残る一戦/フェブラリーS

  • 2014年02月25日(火) 18時00分


◆ダート1600mのGIにまぐれ勝ちはない

■2014年 フェブラリーS

2014年 フェブラリーS 映像

 16頭立て最低人気のコパノリッキー(父ゴールドアリュール)が2番手から抜け出してそのまま押し切り、GIレースではめったにない大波乱に終わった。単勝272倍。馬番連勝は843倍という歴史的な番狂わせとなった。

 もちろんこれは、骨折ブランクのあと2戦連続して思うような成績が残せず、4歳コパノリッキーの評価が著しく下がっていたのが高配当を生んだ最大の要因。今回は前2戦と比べて入念に乗り込み、多少なりとも上向き気配を示してはいたものの、なにせ抽選で滑り込んだ馬。最初から圏外の評価になったのは仕方がない部分がある。ただし、フロックではない。

 レースの流れ、もまれない枠順に恵まれたのはたしかだが、積極策で先行し東京ダート1600mを1分36秒0で乗り切り、スパートを待って最後「11秒5-11秒9」でまとめた田辺騎手の好騎乗も重なっての実力勝ちである。ダート1600mのGIにまぐれ勝ちはなく、これは明らかに負けた方に総合能力がなかったということである。

 GI級の馬が何頭もそろって非常にレベルの高い1戦と思われていたが、実際には「ダート1600m」のGIレースとすると、考えられていたほどはレベルの高い組み合わせではなかったことが分かってしまった一面も否定できない。

 伏兵エーシントップが逃げ宣言して作ったレースの流れは、前半1000m通過「60秒6」だから、確かに厳しいペースではなく、スローにも近い。

 しかし、レース全体のバランスは、

「前半35秒5-48秒0 後半48秒0-35秒4」=1分36秒0

という平均ペースの見本のようなバランスであり、トランセンドの勝った2011年の、

「前半35秒7-47秒9 後半48秒5-36秒3」=1分36秒4

あるいはアドマイヤドンが差し切った2004年の、

「前半35秒8-48秒2 48秒6-36秒0」=1分36秒8

と似たようなものである。確かに厳しいハイペースではないが、良馬場のダート1600mとするとごく一般的な平均ペースだった可能性が高い。レース全体として考えると、だれにも有利、不利はない。だいたい、ダートのGIレースでは、流れてくれなかった(前が止まってくれなかった)とする他に責任を転嫁するような敗因は、芝のレース以上に成立しないことになっている。自分で主導権を握りレースを作ればいいとはいえないまでも、自ら積極的にレースの流れに乗って、相手をねじ伏せるのが多くのダートチャンピオンの戦い方である。失速する馬を待つレースではない。

 エーシントップの作った流れは少しもトリッキーな流れではなく、だれでも楽々と流れに乗って追い比べに持ち込める、楽な流れだった。まして勝ち時計は少しも速くない。

 レベルの高い組み合わせだったように思えたが、実際には各馬のレーティングはホッコータルマエの昨年のJPNランキング「117」がトップであったように、決してハイレベルではないことを露呈してしまったのかもしれない。少なくとも、マイルのダートGIにしてはスピード能力の裏付けの乏しい馬が多かった。ドバイワールドC(オールウェザートラック)を展望する馬が何頭もいたが、そこで通用するスピード能力がある馬なら、このムリのない流れを利して、楽々と突っ込んで台頭していたのではないか。そんな疑問は残ってしまった。

◆ベルシャザールもホッコータルマエもドバイを展望するうえでは物足りない内容

 1番人気ベルシャザール(父キングカメハメハ)の凡走は、スタートの出負けがあまりにも痛かったのは事実である。流れに乗り遅れてずっと外々を回る展開。それでも3着に押し上げたのは能力を示したとはいえるが、厳しい見方をするなら、展開うんぬん、相手うんぬんではなく、引っ張ってもらった武蔵野Sではルメール騎手で、1分35秒3(自身は59秒3-36秒0)を記録できたが、ドバイで勝ち負けの展望を掲げるなら、今回とて少なくとも「ハナ差」及ばずぐらいのレースはして欲しかった気はする。ちょっと体の硬い馬になりかけている印象が残った。

 ホッコータルマエ(父キングカメハメハ)は、JPNランキング1位らしいがんばりを見せて2着を確保したが、辛い点をつけるとやっぱり物足りない。まだキャリアで見劣り、やっと好調時の動きを取り戻しつつある状態のコパノリッキーを、とうとう交わせなかった。昨秋の南部杯1600mでエスポワールシチーを捕まえ切れなかったときと同じである。マイルから1800mのスピード決着を歓迎するタイプではないのはたしかだが、最優秀ダートホースの座を奪われたベルシャザールに先着して納得している場合ではない。ドバイのタペタトラック向きのスピードと切れが足りなかった。

 ニホンピロアワーズ(父ホワイトマズル)は、先行馬向きの流れが予測された中、もう少し積極的なレースをして欲しかったが、レースが終わってから、「これならもっと先に行っていれば良かった」のコメントが出てくるあたり、完全に陣営の読み違いだろう。

 ダート1600mのレースが組まれているのは、JRAでは、現在は東京コースだけ(おまけに芝スタート)。だからみんなが経験不足であり、ほかの馬もレベルの高いダート1600mを経験していないのが、フェブラリーSのもっとも難しい点である。弱気すぎた物足りなさが残った。相手のスピード能力を読み切れていなかったのだろう。

 スローにも近い流れでだれもバテていないから、内にスペースのできる余地はなく、ベストウォーリアゴールスキーワンダーアキュート…などは終始もまれ通し。この内枠グループは力負けというより、ダートのマイル戦らしい厳しい流れでバラける展開にならなかったから仕方がない面はある。4歳ベストウォーリアはキャリアがないだけにとくにこの展開は苦しかった。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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