◆この弥生賞で3歳牡馬の勢力図が見えてくる 過去10年の皐月賞で1-3着した計30頭が直前に出走したレースは、「弥生賞12頭。スプリングS8頭。若葉S6頭」。この3競走に集中し、30頭中の26頭までを占めている。
多くの場合、今週の弥生賞が最重要な直前ステップになることが多いが、今年の弥生賞には、ここに至るまでの路線のポイントレース「ラジオNIKKEI杯」の1-2着馬
ワンアンドオンリー、
アズマシャトルを筆頭に、「若駒S」の1着馬
トゥザワールド、「きさらぎ賞」の小差3着馬
エイシンエルヴィン、そして「京成杯」の2-3着馬
キングズオブザサン、
アデイインザライフ。主要レースのレベルを推し量るにふさわしい馬、さらにはカギを握る馬が、そろって出走してきた。
2週後の「スプリングS」「若葉S」が最終ステップになる馬も、イスラボニータのように皐月賞直行になる馬もいるが、プレイアンドリアルは皐月賞には間に合わないから、皐月賞候補と思われる有力どころの7割方が、この弥生賞にそろって出走してきたと考えていい。土曜日のチューリップ賞と同じく、本番と同距離の、同じコース。
この弥生賞は、今年の全体レベルを明らかにしつつ、直前のランキングや勢力図を作成するのに、かなり組み立てやすい基盤の骨組みとなってくれそうである。ここまでのところ、ラジオNIKKEI杯、きさらぎ賞のレースレベル(レースレーティング)が、他のレースをちょっとだけリードしているとされるが、本当にそうなのだろうか。その答えも見えてくるかもしれない。
関西馬強しの流れに呼応して、ここまでの路線の中で、きさらぎ賞が重要なレースになる年が多いが、人気のトーセンスターダム(トーセンジョーダン、カンパニーの一族)が勝った今年のきさらぎ賞も、時計の1分47秒6(稍重)以上にレースレベルは高いと思えた。そこではトーセンスターダム、バンドワゴンに遅れをとったが、大きく変わる可能性大とみて、エイシンエルヴィンに注目したい。
◆魅力は今の中山への適性 負けはしたものの、4カ月の休み明け、初コース、未勝利を勝っただけの格上がりとすれば、トーセンスターダムと0秒2差は上々だろう。少し芝の痛んでいた内寄りに突っ込んで、上がり34秒9は、トーセンスターダムとほんのわずかな差だった。
今度は太めが絞れて、明らかに状態は上向いている。最大の魅力は、今春の中山向きのパワー、底力を秘めているのではないかと思われること。
父シャマーダル(その父ジャイアンツコーズウェイ)は、近年のレベルこそ高くないが、重馬場もこなした仏の春の2冠馬であり、祖母ヘレンストリートは愛オークス馬。この牝馬は2003年の2冠馬ネオユニヴァースの母のいとこになる。また、エイシンエルヴィンの母方は、エイシンフラッシュと同じようにドイツ色が濃く、凱旋門賞を独走したノヴェリスト(今春から日本で種牡馬入り)の父モンズーンが、母の父に登場する。
さらに、母ライナはドイツの代表する種牡馬ズルムーの(3×4)。このファミリーの代表馬は、やっぱり凱旋門賞を独走したデインドリームによって名を上げた種牡馬ロミタス(祖父ニジンスキー)であり、ヨーロッパ色、ましてドイツ色の濃い馬の中では、日本の芝に適応できるタイプではないかと思われる。京都のきさらぎ賞で好走できるなら、重い鈍重型ではない。おそらく、今季の中山の芝コンディションにぴったりの底力とパンチを秘めているだろう。マイラーでも、長距離型でもなく、2000-2400mくらいが理想か。
少なくとも、きさらぎ賞好走馬にしては、今回は人気の圏外に置かれているのだから、プラス要素があると判断するなら、買う価値はある。
変に相手をしぼる必要はない。トゥザワールド、ワンアンドオンリーの評価を下げているわけではないから、この2頭本線。ただ、人気薄から入るのだから、他の伏兵評価の馬にも遠慮なく流したい。