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【騎手引退】上村洋行 22年間の真実(4)―「先生のために勝ちたい」自分を追い込んだ執念のGI

  • 2014年03月13日(木) 18時00分
上村洋行元騎手

◆騎手人生最大のプレッシャー

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 2005年には年間の勝ち星を40に乗せ、上村の騎手人生は、再び軌道に乗り始めた。そして2007年5月、京都の3歳500万下で初めてスリープレスナイトの手綱を取り、2008年のCBC賞では、実に10年ぶりとなる重賞制覇を決めた。続く北九州記念も連勝すると、迎えたスプリンターズSは堂々の1番人気。騎手人生最大のプレッシャーが、上村を襲った。

 1番人気になるであろうことはわかっていました。でも、前日の調整ルームで、もうプレッシャーと重圧に負けそうになって。レース当日の10月5日は、橋口先生の誕生日だったんです。橋口先生への思いもあったから、どうしても勝ちたかったし、先生にGIをプレゼントしたかった。でもそういう思いが、さらに自分を追い込んでいって。

 それで、四位先輩が風呂場にひとりで入って行ったときに僕もついていって、どういう気持ちで臨んだらいいのか、どう乗り切ったらいいのかを相談をしたんです。四位先輩は何度も経験していることでしたからね。そうしたら、「馬の力を信じて、普通にあの馬の競馬をしてきたらいいんだよ。それで負けたらしょうがないだろ」って。その言葉で、腹を決めて乗ることができたんです。あのときの四位先輩のひと言は本当に大きかった。

 レースは好スタートからスッと控えて、道中は外目の4、5番手を追走。余裕を持って直線に向くと、馬場の外目から力強く抜け出し、最後は2番人気キンシャサノキセキに1馬身1/4差をつけてのうれしいGI初制覇。ジョッキー生活16年目にして、ついにGIタイトルを手中に収めた上村は、橋口への思いも相まってか、馬上で嗚咽をもらした。

上村洋行元騎手

▲ジョッキー生活16年目での悲願達成(撮影:下野雄規)


 誰かのために勝ちたいと思ったのは、あのレースが初めてでした。先生もとにかく「良かった、良かった」と喜んでくださって。サイレンススズカへの思いとはまた違いますが、もちろん、スリープレスナイトに対しても特別な思いがあります。一度は引退を覚悟した僕を、GIの高みまで連れて行ってくれた馬ですからね。

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