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本番で勝ち負けするのは「やっぱり厳しい」/フィリーズレビュー

  • 2014年03月17日(月) 18時00分


◆戦い方に幅は出たものの相手をねじ伏せた印象はなかったベルカント

■2014年 フィリーズR

2014年 フィリーズR 映像

 最内枠を引いた武豊騎手のベルカント(父サクラバクシンオー)が、これまでの逃げ一手の戦法から脱皮するように控えて進み、直線は内ラチ沿いから鋭く抜け出してみせた。

 勝ちタイムは1分22秒3。新阪神コースになってから過去7年間の平均勝ちタイムは「約1分22秒4」。これで最近7年連続して1分22秒台となったので、年ごとに少々の馬場差あるだろうが、まったくいつものと同じような、平均的なフィリーズレビューだったのではないかと考えることができる。

 新阪神に変わった2007年以降の過去7年間で、このトライアルから本番の「桜花賞」に挑戦して結果を残したのは、

  2008年……レジネッタ  (FR3着1分22秒5―→桜花賞1着)

  2012年……アイムユアーズ(FR1着1分22秒8―→桜花賞3着)

 の2頭だけである。新阪神コースの桜花賞1600mは、以前より総合スピードが求められる厳しいマイル戦になったため、以前と比較すると、直前の阪神1400m(内回り)のトライアル組は「桜花賞との結びつきは一段と希薄になっている」のではないか、と考えられている。

 レースの中身を振り返って、桜花賞に出走するだろう馬をチェックしたい。新阪神コースの7年間の平均勝ちタイムは「1分22秒4」としたが、その中身は平均して、

   「前半34秒6−(11秒9)−後半35秒9」=1分22秒4であり、

今年の「前半34秒6−(12秒1)−後半35秒6」=1分22秒3は、快速を競う1400mのわりには、中盤で少し息が入ったためか、最終1ハロンは12秒5とかかったものの、上位5〜6頭は最後までしっかり伸びていた印象がある。

 最初の2007年は芝状態が良く、どのレースも時計が速かったので別扱いにすると、例年と同じ前半34秒6でありながら、レース上がり「35秒6」は、メイショウマンボの勝った昨年に次いで2番目の速さである。

 といって、ほとんど例年と同じレベルであるから、とくに今年のフィリーズレビュー組がその中身優秀とはいえない。例年通り、本番で勝ち負けするのは「やっぱり厳しい」というのがTV観戦ではあったが、一緒にいた複数の記者のレース直後の感想だった。まして、ハープスターがいるから、今回の内容にプラスアルファを考えられる馬だけが、2番手候補に浮上できるかである。

 鮮やかに勝ったベルカントは、戦い方に幅は出たものの、それはおそらくベストに近いと思える1400mだからのことであって、相手をねじ伏せた印象はなかった。絶好の1番枠からまったくコースロスなくレースを運び、最後もラチ沿いを衝いて武豊騎手の少しタイミングをずらしたスパートもドンピシャ。1馬身ちょっとの差をつけたものの、2〜5着馬とはコース取りと仕掛けのタイミングの差だけだったかもしれない。たとえばぶっつけのレッドリヴェールの仕上がりが思わしくないとか、他の上位組に不安が生じた際に2番手グループに浮上までだろう。

 果敢に逃げて2着のニホンピロアンバー(父スウェプトオーヴァーボード)は、現実に粘り込んだのだから立派なものだが、これには他の同型馬が控えてくれたマイペースの利が大きかったことは否定できない。1600mに延びていいタイプではなく、本番はかなり苦しい。

 3着エスメラルディーナ(父はストームキャット系のハーランズホリディ)は、他の好走馬と異なり今回がまだ3戦目。また、父は9ハロンのGIを3勝もして、ムーンバラッドの勝った2003年のドバイWCを5馬身差2着がある。レース運びも決して単調な一本調子型のそれでななく、このあと変わってくる可能性はこの馬がNO.1かもしれない。馬体の良さも上位陣では光っていたうえ、変にチャカつく馬が多かった中で、480キロの数字以上に体を大きく見せ、全体にムードがあった。同厩のヌーヴォレコルト(チューリップ賞2着)とともに直前輸送となる予定という。変わり身にとくに注目したい。

 4着アドマイヤビジン(父クロフネ)は16番枠の不利を克服できず、途中でなし崩しに脚を使ってしまう一番苦しいレースだった。4コーナーで振られて外に行った不利も大きい。

 それでも最後まで伸びていたから、エスメラルディーナとともに、1〜2着馬よりは本番で変わる可能性は大きいように思える。3代母はタマモクロスの半妹ミヤマポピー(その父カブラヤオー)。近年では忘れられていた牝系にも近いが、本番ではタフな面を発揮したい。ただ、条件賞金1350万円はボーダーライン上である。

 人気のホウライアキコ(父ヨハネスブルグ)は、ひと息入れて体つきは悪くなかったが、阪神JF時と同じようにチャカチャカして入れ込みに近い状態だった。好位に控えたというより終始スムーズではなかったように思える。ゴール前の脚いろなど決していっぱいではなくまだ伸びる脚はあったと思えるが、レース前の落ち着きを欠くのは心配。これが人馬のリズムを壊しているようにも感じられるから、また、調整に苦心するかもしれない。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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