◆単純に差し馬有利とはならない 新中京コースの短距離戦は、ペースを問わず、最後に逆転が待っている印象が強い。中距離から長距離戦のスローだと、楽に行けた先行タイプが直線に向くとペースアップし、そのまま押し切るレースも珍しくないが、短距離戦でペースが落ち着いてしまうと、接近して追走できる後続は、もともと追っての鋭い切れを生かしたい馬が多いから、寸前での逆転に持ち込みやすいのだろう。
新中京になってまだ、2年ちょっと。最初は「芝設定をだいぶ変えた」と言われ、12年の高松宮記念は1分10秒台だったから、現在とは大きく異なる。実際に現在とほぼ同じような芝で高松宮記念が行なわれたのは、1分08秒1(34秒3-33秒8)だった昨年が最初であり、オープンの芝1200mはほんの少ししか行なわれていない。
マジンプロスパーがレコードで差し切り、ハクサンムーンがクビ差2着だったCBC賞は、1分08秒0(34秒2-33秒8)だった。
今回の人気の中心ストレイトガールが中位から差し切った尾張Sは、1分08秒6(34秒5-34秒1)である。みんな前半の方がラップの遅い、変則の1200mに近い。
コース形態はかなり違うが、牝馬レディオブオペラが4連勝した京都の1200mとほとんど同じようなバランスで、前半600mより、後半600mの方が速い後傾バランスである。
これには前半のラップが速くなりにくいコース形態が影響しているが、京都と違って中京には最後の直線に上り坂があることを考慮すると、かなり特殊な1200mの中身というべきだろう。
ちょっと前半飛ばすと、最後の直線が長くなったうえに上り坂ができたから苦しい。みんな慎重になりムキになって飛ばさないのである。とくにオープン馬は折り合いも付きやすい。なだめて行くことができる。
でも、なんとしても勝たなくては意味のない下級条件では、馬も行きたがるから、あまりなだめずに行く。だから条件クラスでは、前半3ハロン「33秒台」は再三記録されているのではないか。という図式が推測がされるのである。
意外なほど、オープンの1200mの前半は楽なペースになりがちな傾向がはっきりしてきたところで、新中京では歴史の浅い高松宮記念。
昨年は1分08秒3で3着に粘り、CBC賞でも1分08秒0で微差2着のハクサンムーンは、ここで控える策はない。
この枠順なら、強気なデムーロ騎手のコパノリチャードも、簡単には譲る手はない。
これに、他コースに前半33秒台の出足を持つレッドスパーダ、レディオブオペラ、巻き返したい内のマジンプロスパーなどが強気に出るとき、今年の高松宮記念は前半34秒台の、500万下より遅いような緩いペースはないと思える。
ハイペースになるというのではなく、やっと日本の1200m重賞らしいペースでレースが展開するのではないか、と推測したい。そのとき、スローに近いペースでも、差し馬が届いていた中京1200mが、当然とも思える前半33秒台になったら、もっと差し馬有利かというと、そうとは限らない。なぜなら、緩いペースだから差なく先行馬を射程に入れて追走でき、切れ味勝負に持ち込めていたかもしれない差し・追い込み馬は、今度は逆に苦しい1200mになる危険が出てきてしまう。
いままでと少し違って、前半が33秒台になるということは、他場より少しタフな中京1200mで、1分07秒台で乗り切る能力があるかどうかを問われるくらい、厳しい1200mになるという意味でもある。ここまでの新中京の1200mの時計推移を振り返ると、底力を秘め、総合スピード能力を持たない馬では、1分07秒6-9はかなり苦しいだろう。
もともと、ペース配分は難しいとしても、G1の1200mに展開うんぬん、上がりがかかって先行馬が止まってくれればうんぬん、は関与しない。コース形態に関係するペース配分が明らかになったら、現在の中京なら、推定1分07秒7くらいで乗り切る能力があるか、どうかである。
総合スピード能力が問われる厳しい1200mになるとしたら、スプリント戦の鉄則通り、1400mくらいは平気で、レベルの高い1600mも乗り切れるくらいでないと苦しいとみて、
リアルインパクトを狙いたい。ディープインパクト産駒は、サンデーサイレンス産駒よりもっと1200mでは目立たないが、出走する馬が極端に少ないだけで、リアルインパクトのように母方にスプリント色が濃いなら、苦にする理由は少ない。1分07秒を切るような高速レースはムリでも、1分08秒を切る程度なら不安はないだろう。最低でも単勝は10倍以上はあるだろうから単、複中心に、連勝は少し手広く流したい。