天皇賞・秋といえば、1番人気が弱いことで有名なレースである。
その原因について先日ある雑誌に原稿を書いたのだが、おおざっぱに言うと、「人気の方が間違っている」という結論になった。
日本ではダービーやJCの行われる2400mから天皇賞・春の行われる3200mまでの距離で活躍する馬が「高い格」を獲得する傾向がある。
有馬記念や菊花賞もこの距離帯に入るのだからやむを得ないことなのかもしれないが、天皇賞・秋で要求されるのは、いま挙げた距離帯では要求される度合いが少ない、スピード能力なのだ。
ちょっと思い出してみただけでも、マイラータイプや、2400mではしんどい中距離馬が天皇賞・秋を多く制していることにお気づきになるだろう。反対に、人気で負けた中にはステイヤー色の強い馬が多い。
今回は、スピード能力の大切さを確認するために、ある調査をしてみた。
平成以降、東京で行われた天皇賞・秋に出走した馬を、次の2グループに分ける。
A.3歳上・4歳上の芝1000〜1600m、準オープン以上のクラスで連対歴がある馬
B.3歳上・4歳上の芝2400m以上、準オープン以上のクラスで連対歴のある馬
A、Bとも「連対歴」については、天皇賞・秋出走より後の時点のものも含む。生涯成績の中に該当レースがあればいい、という前提である。また、当然ながらAとB両方にカウントされる馬も出てくる。
では、A、B両グループの天皇賞秋成績を見てみよう。
Aに該当する馬は50頭で、その天皇賞秋成績は(6-5-6-51)。勝率8.8%・連対率16.2%、単回収率178%・複回収率108%となっている。
Bに該当する馬は66頭で、成績は(5-9-6-74)。勝率5.3%・連対率14.9%、単回収率27%・複回収率68%となっている。
あらゆる指標でAが上回っているうえ、回収率の差が決定的である。Bタイプで連対できるのは「強さですべてを押し切る馬」だけであり、このグループから穴馬を見つけることは困難だ。
コース回収で多少直線が伸びたとはいえ、今回も適性距離が2000m「まで」の馬を重視していきたい。