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サクセスブロッケン、目指せ!憧れのダービー先導

  • 2014年04月01日(火) 18時00分
第二のストーリー



◆ツンデレブロッケン

 これぞ“ザ・サラブレッド”という黒光した美しい馬体を持つサクセスブロッケン(セン9)。東京競馬場の誘導馬となってからもその美しさは衰えを知らず、ブロッケンの姿を目にするたびに、うっとりしたものだった。

 ギャップに弱いのが人間の常。2012年から始めたFacebookで繰り広げられる、そのアカ抜けた容姿からは想像もできないような、ユーモアセンスあふれる関西弁が人気を集め、記事が更新されるたびにファンからのメッセージが多く寄せられるようになり、『いいね!』がたくさん押される。

▼大人気のサクセスブロッケンFacebook→コチラから

 Facebook効果も相まって、今や東京競馬場の看板誘導馬として地位を築いた感のあるサクセスブロッケンの素顔を探るべく、開催のない平日の競馬場で彼と対面した。

 ブロッケンは馬房の中にいた。

「人が前を通ると、噛みつこうとすることもあるんです」と、担当の岩本浩さんは苦笑いしている。確かに写真を撮ろうと馬房の前に立つと、素早く耳を絞った。耳を後ろに倒すのは、馬が怒ったり、機嫌の悪い時の仕草。何だか眼光も鋭く感じてしまう。

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▲耳を絞るサクセスブロッケン


 しばらく観察していると、その瞳からはいつの間にか鋭さが消えて、こちらをチラ見。「どうせこの女も俺のファンなんやろ〜? 俺、やっぱりモテるわ〜」という、上から目線の関西弁が聞こえてきたような錯覚に陥る。これもあのFacebookの影響かもしれない。

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▲こんなお茶目な表情もするブロッケン


「いつも威張っている感じですし、怒りっぽい面もありますね」(岩本さん)。馬房の前でカメラを向けた時は、やはり怒っていたようだ。だが、洗い場につながれたブロッケンは、手入れをしている岩本さんにふいに顔を寄せて甘えるような仕草をした。

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▲洗い場で見せるとろ〜んとした顔


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▲岩本さんに甘えるブロッケン


「ツンデレなんでしょうかね。こうやって触っても大丈夫ですし、可愛いところもあるんですよ」。岩本さん、すっかり顔をほころばせている。そんなツンデレさんを、たまに「ケンさん」と呼んでみたりもするそうだ。

 威張ったり、怒ったり、甘えたりと、憎めないキャラのケンさんは、気が小さいところもある。音に敏感で、歓声や拍手がちょっと苦手なのだ。自身が優勝したフェブラリーSで、昨年初めて先頭で誘導したのだが、ゴール板を過ぎたあたりで尻っぱねしてしまったのは有名なエピソード。だがリベンジを誓った今年のフェブラリーSでは、チャカチャカしつつも、尻っぱねせずに先頭を務め上げて、誘導馬として成長したことをアピールしていた。

◆実は障害飛越が得意!

 ブロッケンには、関西弁以外にも、馬術競技の障害飛越という特技がある。130cmの障害コースをこなした事もあり、大障害の1歩手前の140cm位までは飛越経験があるそうだ。

「元競走馬で、これだけ飛べる馬はあまりいないですね。障害に対しても前向きです。子供が乗っても、ちゃんと飛越して回ってきますよ」(岩本さん)。

 誘導時に見せた豪快な尻っぱねと障害飛越は、ブロッケンが生まれながらに持っている、類まれなバネがなせるワザなのではないかという気がした。

 実はブロッケン、担当だった町田先生こと町田祐司さんがJRA競馬学校に異動したために、この3月から岩本浩さんに担当がバトンタッチされたばかり。前回紹介したネコパンチも岩本さんが担当なので、人気者2頭を抱えてのプレッシャーがあるかと思ったのだが…

▼ネコパンチ“誘導馬デビュー”に向けて励む日々→コチラから

「あくまで、一担当として粛々と自分の仕事をやっていくだけです」と、自然体で語ってくれた。そして「担当ではない人が乗っても、安定して誘導をこなせるようになるのが理想ですよね。ブロッケンも、それができるように成長していってほしいと思います」

 岩本さんが言うように、ブロッケンが誰もが騎乗できる誘導馬になれたら、ネコパンチと並んで誘導するという場面も将来的に夢ではないということになる。サクセスブロッケン&ネコパンチの揃い踏みが、1日も早く実現してほしい。頑張れ、ブロッケン! その前に、目指せ!ダービーの先導…かな?

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▲現役時代と変わらぬ雄姿を競馬場で(C)下野雄規


(取材・文・撮影:佐々木祥恵)

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北海道旭川市出身。少女マンガ「ロリィの青春」で乗馬に憧れ、テンポイント骨折のニュースを偶然目にして競馬の世界に引き込まれる。大学卒業後、流転の末に1998年優駿エッセイ賞で次席に入賞。これを機にライター業に転身。以来スポーツ紙、競馬雑誌、クラブ法人会報誌等で執筆。netkeiba.comでは、美浦トレセンニュース等を担当。念願叶って以前から関心があった引退馬の余生について、当コラムで連載中。

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