「すごく走る子を出す気がしてならない」繁殖入りアイムユアーズ/トレセン発秘話
◆あと一歩で届かなかったGIの夢は産駒に
クイーンS連覇など、牝馬路線で重賞4勝を挙げる活躍を果たしたアイムユアーズ(牝5・手塚)の引退→繁殖入りが先週末に発表された(けい養先は北海道・ノーザンファーム)。今年の目標のひとつとしてクイーンS3連覇を手塚貴久調教師(49)が年頭に掲げたことからすると、今回の電撃引退は生産者サイドの強い意向が働いたものだろう。
「競走馬としてもまだ頑張れたろうけど、もう十分かなとも思うんだ。阪神JFを2着、桜花賞を3着し、オークスでも4着と踏ん張った。未勝利勝ち以降はすべて重賞を走って、2桁着順が2回しかないのだから立派だよね。市場取引価格1650万円で落札された馬が、その10倍以上の賞金(2億4000万円強)を稼いできたんだ。俺はご苦労さんと言いたいね」
ねぎらいの言葉をかけるのは3年近く苦楽を共にした担当キュウ務員・峯さん。必要以上の欲を示さないのがこの人らしいが、繁殖牝馬として期待値が高いことを知ればこその発言でもある。
「ファルブラヴ(産駒)は早熟のイメージが強いし、この馬も入ってきた当初に完成された印象だった。函館2歳Sで2着した時は当時が旬かなと思ったくらいでね。ところが経験を積むごとに馬が変わってきて、昨夏には後肢も本当に充実した。おそらく曽祖母ダイナカールから受け継ぐ血が、この成長力を生んだと思うよ。お母さん(セシルブルース)がエルコンドルパサーの貴重な血を引くのも魅力だし、俺はすごく走る子を出す気がしてならないんだ」(峯キュウ務員)
“北の芝の申し子”の引退で、北海道シリーズの馬券を簡単に取れる手段を失ったのは少々残念だが…。一説によれば、ディープインパクトとの初年度交配も決定済み。母があと一歩で届かなかったGI奪取の夢は、その子供に託される。今は峯さん同様、初子との出会いを楽しみに3年後の夏を待ちたい。POGファンの方々もお忘れなきよう。
(美浦の宴会野郎・山村隆司)