■自分を奮い立たせるために演じた“ビッグマウス” 自分なりのアプローチでトップを目指そうと決意し、コーチを付けたのが2010年。コーチといっても、あくまで動作解析のプロで、乗馬経験がある人ではなかったから、コーチの言う通りにカリキュラムをこなしたところで、騎乗技術が向上するとは限らなかった。
ただ、トレーニングや体のケアに関しては、若いころからアンテナを張っていたし、実際、いいと聞けばとりあえずやってみる、ということを繰り返してきた。まずはやってみてから自分で取捨選択をする、というのが長年のスタンスだったから、コーチを付けたときも最初に思ったのは、提示されたカリキュラムに対して、一切口を挟まないでおこうということ。最初は、“えっ!? こんなことが技術向上につながるの?”っていう驚きの連続だったけれど、実際、コーチを付けた2010年に関西リーディング、翌年にはJRAリーディングを獲ることができて、すごく自信になったね。そこに至るまでのカリキュラムの内容についても、機会を見てこのコラムのなかで触れていければと思っている。
スポーツ選手に限らず、どんな職業でもそうだと思うけれど、頑張ればそのぶんだけ結果が出るわけではない。結局は、その頑張る方向というか、押さえるポイントがわかっているか、わかっていないか。その差が仕事の出来不出来につながってくると思っている。自分は体を動かすことがそれほど好きではないし、トレーニングはどちらかといえば嫌いだ。だから、無駄なことをしたくないという思いが常にある。それが結果的に、取捨選択を慎重にさせているんだと思う。
意識改革につながったひとつに友人からの叱咤があって、そのときに「自分がトップに立っている状況をイメージして、自分ならできると思い込め」と強く言われた。それ以来、自分に言い聞かせ、また自分を奮い立たせるためにも、「自分がこれからの競馬界を引っ張っていくつもりで頑張ります」というようなことを、あえて公の場で口にするようにした。それが2010年だったと思う。
日本人は、謙遜しながら上を目指す姿勢を美徳とするところがあるけど、当時はあえてビッグマウスを演じたところがあった。おそらく「福永ごときがなに言ってんだよ」って思った人もたくさんいたと思う。でも、今だから言えることかもしれないけれど、