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一大事とは今日只今の心なり

  • 2014年05月01日(木) 12時00分


◆オークスへの扉をこじ開けたサングレアル

 出来るか出来ないかわからぬ時は、出来ると思って努力せよと言う。また、思い込みも大切。この場合、思い込みを目的とおきかえると分かりやすい。目的と定めて、ありのままの自分のいまをやり切る。これを後押しすることばが、江戸初期の高僧にある。「一大事とは今日只今の心なり」と。

 人生で一番大切なのは、今日ただいまの自分の心なのだと諭しているのだ。これだけの強い思いをぶつける瞬間が訪れるだろうか。いや、思い込みだけなら競馬でしょっちゅうある。但し、かなえられることは少ないのだが、それをしっかり見せてくれるのは、レースの中にあるのだ。フローラステークスを勝ったサングレアル。桜花賞とオークスの牝馬二冠を含むGI6勝馬ブエナビスタの半妹、わずか2戦1勝ながら抽選を突破してオークストライアルへ出て自力でオークスへの扉をこじ開けたのだ。414キロとどの馬よりも小さく、馬群の後方、内ラチぞいを駆ける姿は、あまりにも小さかった。幼さが残っていて誰もが姉と比べるのは酷と見る中、とにかく立て直してこの一番にという思いを背負って走った。小さい子供が大人たちを追い掛ける、そんな光景だったが、直線外に出してからの差し脚は切れた。12頭をごぼう抜き、レースレコードをマークする堂々たる勝利だった。この末脚は受け継いだこの一族のもの。出来るという強い思いでつかんだ勝利だった。

 大事なここ一番で伏兵と見られた馬が勝利をつかむケースには、この思い込みが大きな力になっている。ミラクルホースと言われたヒシミラクルの天皇賞・春の勝利もそうだった。菊花賞馬でありながら自分のかたちにならないと大敗するので、なかなか信用されなかったが、天皇賞を前に陣営の思いは決まっていた。後方からジワリジワリと上昇させ、3コーナーから早めに仕掛けるロングスパート。描いたイメージどおりの運びで目的を達成していた。確信が持てるのは、今、走っているこの一瞬だけ、そう思っている伏兵はいるだろうか。

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ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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