◆高速馬場ゆえの死角はある まだ全容を現していない3歳馬の東京のマイル戦は、古馬よりはるかにレースの流れが重要。厳しいハイペースで展開すると、秘められていたスピード能力が一気に引き出され、予測(期待)以上の高速決着が可能になることが多い。
今開催の東京は、必ずしも高速馬場ではないコンデションと、再三のスローペースで展開してきたから速いタイムは少なかったが、土曜日の朝に来てみたら、芝丈が先週までよりずっと短かく刈り整えられている。先週までとは大きく異なる高速決着になりそうなところが、今年の場合は、特に大きなポイントか。先週までより、明らかにイン有利でもある。
超高速馬場だった昨年11月の京都で、人気の
ミッキーアイルは1分32秒3の2歳日本レコードで圧勝しているから、まったく心配ないように思えるが、同馬の本質は平均ペースでの粘り強い先行力ではないかと考えると、高速馬場だからの死角はある。レコードを記録した際のような、高速馬場は必ずしも合っていない危険もある。ミッキーアイルが強いと思わせたのは、朝日杯FSの前日の「ひいらぎ賞」で示した朝日杯FSより0秒5速い1分34秒2の中身だった。
前後半バランスは「47秒4-46秒8」。後半になって加速し、最後は34秒7-11秒7でまとめている。軽快な快速馬のマイル戦の勝ち方というより、本当は底力の平均スピードが身上の、母の父ロックオブジブラルタルの影響を思わせた。
前回の阪神1600mでも強いと感じさせたが、同じようなムリのない平均バランスながら、1分34秒0の中身は「46秒7-47秒3」。上がりは35秒2-12秒5だった。
軽快なスピード系ではないためか、前半にちょっと速いラップを刻んだだけで、意外なほどそれが苦しく、後半に響いた印象があったところが気になった。非力で総合力不足だから、後半のラップが落ち込んだのではない。ミッキーアイルが、案外、母の父ザ・ロックの影響が強いと考えると、欧州タイプが高速馬場で前半にふだんよりきついラップを踏んでしまうと、後半にグングン加速するようなレースからは考えられない「息切れ」が生じることがある。思わぬスピードが出てしまうと、決してムリしているわけではないのに、心臓の回転と呼吸のバランスが崩れるからであり、ジャパンCで再三みられた欧州タイプ苦戦の大きな原因である。
ミッキーアイルが先手を取ってしまえば、落ち着いた平均ペースになるはずだが、知らずのうちに高速の前半になると、最後は大丈夫だろうか、そんな死角が生じたというだけではあるが……。ハイペースが応えて失速とは少し異なる意味の、高速馬場に対する死角がミッキーアイルにはあるだろう。
もっとも、今年、実際に可能性が高いのは、人気の逃げ馬がいるからこその落ち着いた流れか。果敢に競り込む伏兵はいても1頭くらいだろう。流れが落ち着けば、上がりは速くなること必至。ミッキーアイルの上がり33秒台はタイプからしてさすがに苦しいが、前半が速くなるよりは後半の加速力はあるタイプだから、対応できるはずだ。押し切れると考えたい。
秘めるスピード能力が侮れない
エイシンブルズアイ、本質があふれる快速系だからこそ切れる
ショウナンワダチ、切れ味の
サトノルパンが、配当の妙味も考えての相手本線。直前までショウナンワダチ中心とも考えたが、馬場は完全に先行馬向きに変わっている。コース変わりが魅力の
ロサギガンティア、同じく東京の方がずっといい
ショウナンアチーヴ。ひと回りたくましくなったアトムが押さえ。東京コースでは苦しいと考えて嫌ったが、ミッキーアイルが勝ったときの相手は、絵に書いたように最初から2番手の馬という記録が3回続いている。