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緩い流れを差し切る/ヴィクトリアマイル

  • 2014年05月17日(土) 18時00分


◆印象を一変させた前走の末脚

 直線一気の追い込みを図ると思えるスマートレイアー(父ディープインパクト)の切れ味に期待したい。差し・追い込み馬には、先行型が苦しくなったところに襲いかかるタイプと、スローで楽に追走できた方が鋭く切れるタイプがいる。スマートレイアーはどちらかというと、前者に近いイメージが強かったが、前回のレースの中身は、そんな印象まさに一変だった。全体には高速レースの1400m1分20秒3で決着の阪神牝馬Sは、後半「57秒6-46秒3-34秒8」の上がりだから、先行馬崩れではない。

 ゴール寸前、鋭く差し切り成功と見えたのは、今回も対戦する同じディープインパクトの上がり馬ウリウリ。中団から上がり33秒6で鋭く抜け出し、鮮やかに勝ったと思えた瞬間、外から一気に届き計ったような追い込みを決めたのが、スマートレイアーだった。勝利を確信した福永騎手の呆然が見えた気がする。画面を見ていた人びとはスマートレイアーの勢いが分かったが、福永騎手はまさかあの態勢と、ウリウリの鋭い伸びから、差されるなどとは思ってもいなかった。

 スマートレイアーの上がりは33秒3にすぎないが、内回りの短い直線の入り口まで仕掛けることなく最後方。11秒5-11秒6の直線、みんなが伸びているところを、大外から約8馬身ぐらいの差を逆転した爆発力はすごい。見た目の推測だけでなく、最後11秒0-11秒0より遅い計算は成立しない。

 楽に追走できた方が鋭く切れる差し馬に近い。この組み合わせの東京1600mで予測されるのはスローに近い緩い流れだが、先週のロサギガンティアと同じような形になるとき、スマートレイアーは届くと思える。

 芦毛は3代母の父スペクタキュラービッド(ボールドルーラーの孫)からくる芦毛。ケンタッキーダービーなど30戦26勝。アメリカ競馬の黄金期をセクレタリアトなどとともに代表した怪物とすると、現代にその血が伝わる馬は少ないが、これはオグリキャップと同じように、残念ながら次の世代に影響を与えなかったため。スマートレイアーのようにスペクタキュラービッドの芦毛まで受けつぐ馬は、世界でもきわめて少ないと思える。日本の活躍馬では、もう芦毛は消えていたが、2011年の勝ち馬アパパネの祖母がスペクタキュラービッドだった。

 スローに近いペースとみて、相手は好位からシャープな切れ味を発揮してくれそうなエクセラントカーヴ(父ダイワメジャー)と、東京のマイル戦ではまず崩れないホエールキャプチャ(父クロフネ)。エクセラントカーヴは東京の芝【2-1-1-0】。秋の中山とはいえ、1分31秒8の京成杯AH勝ちがあるから、先週から高速の芝となったコンディションは大歓迎だろう。ホエールキャプチャは12年に1分32秒4で快勝し、決してデキの良くなかった昨13年もそっくり同じ時計でハナ差2着。上がりまでほとんど同じような33秒台だから、デキのいい今年、崩れる危険は小さい。

 ホエールキャプチャの芦毛は、クロフネを通して伝わるネイティブダンサーの芦毛。ネイティブダンサーは灰色の幽霊と形容されたというが、陣営も8分くらいの状態ではないかと感じ、なんと12番人気にとどまった昨年、馬群から抜け出てきたホエールキャプチャは、確かに灰色の幽霊だった。今年はもう真っ白になったが、昨年より明らかに中間の気配はいい。3年連続の連対の可能性は高い。

 連の相手に、メイショウマンボ、ウリウリ、状態絶好のフーラブライド。追い込み一手でふつうは届きそうに思えないが、弾むように動いたゴールデンナンバーは、少々余裕残りでも素晴らしいデキと思える。先週と変わらない芝状態だから、内枠の馬が上位独占に近かった先週の再現はある。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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