◆女傑たちが素晴らしいレースを魅せてきたオークス 前半は控えて後方から進み、「最後の直線は大外へ…」。
ハープスター陣営の公言するレース展望は、先週の東京の芝コースの結果を振り返ると、きわめて大胆である。先週、高速コンディションの芝は少しきつい流れになっても、後方から外に持ち出して勝ち負けした馬は、一部の少頭数レースを除き、皆無に近かった。
今週の芝が急に大きく変わることはない。その戦法でホントに届くのだろうか。大丈夫なのか。コースロスがあっては、最後は同じ脚いろになってしまうのではないだろうか。
だが、桜花賞のハープスターは、見方によっては辛勝だが、あれは食い下がって上がり33秒4のレッドリヴェールを誉めるべきで(だから、ダービーに出走する)、時計の1分33秒3は桜花賞のタイレコード。上がり32秒9を記録した勝ち馬など史上初だった。
陣営が早くから、超強気にハープスターのズバ抜けた能力に自信を深めたのは、新潟2歳Sの勝ち方だった。スローの新潟では、上がり3ハロン32秒5など少しも珍しくないが、長い新潟の直線、ハープスターは残り400mまで最後方追走。本気で追いつこう、ましてや差し切ろうなどというスパート態勢にまったく入れなかった。ところが、残り2ハロン付近でやおらストライドの回転を早めると、推定「10秒2-10秒8」。あっという間に3馬身も抜け出した。2ハロンだけのレースで、上がり32秒5。懸命に鋭く伸びて終い33秒7で2着したイスラボニータは完全にかすみ、ただの凡馬に映ったのである。
上がりタイムは、馬場やレースの流れに大きく左右されるから、それだけで高い能力を示すとは限らない。だが、2歳馬がとても本気で走ったとは思えない軽やかなフットワークで、楽々と連続2ハロン10秒台は、単なる素質馬にとどまるものではない。
だから、直線に向くまで、おそらくスローで流れるはずの東京2400mで慌てて動くことはない。馬群に入って不利を受ける危険を犯す必要はない。おとなしく追走しているなら、明らかに母の父ファルブラヴ似を感じさせる馬体からくる(否定できない)スタミナ不安も、最小限にとどめることができる。それで伸びを欠くことはない。そういう力関係ではないはずだ、という直線勝負なのである。
2005年のシーザリオは、後方でもたつきながら、上がり33秒3で勝った。2009年のブエナビスタは、外に回って33秒6で差し切っている。2007年の日本ダービーを独走したウオッカは、馬群を割って一直線に伸び、推定「10秒8-10秒8-11秒4」=33秒0という驚異の記録を残している。
早い時期から、凱旋門賞挑戦の大展望をかかげるハープスターは、ホントに期待通りの勝ち方ができるだろうか。敢えて危ない橋を渡るかのようなレース運びで、その才能を改めて確認しようとするハープスターに求められる結果が、望ましいものになることに期待したい。
横山典弘騎手に代わり、距離延びての適性を示してくれる可能性大の
マジックタイム、中身の濃い桜花賞0秒1差の
ヌーヴォレコルトが相手本線。
人気薄の伏兵では、内枠の
ディルガ、
ペイシャフェリスを連下候補に入れておきたい。
もし、ハープスターが歴代の女傑、名牝と並び立つようなレースを展開するなら、連続して秒差なしの好勝負をみせるレッドリヴェールの出走する日本ダービーは、一段と盛り上がること必至である。