「出るからにはノーチャンスではない」太の戦略は!?
1番人気ナムラビクターで挑んだ平安Sは、残念ながら5着に終わった小牧騎手。今回はその平安Sを振り返るとともに、サトノルパンで参戦が決まったダービーについて、過去の思い出から今年の意気込みまで、現在の心境を明かしてくれました。
(取材・文/不破由妃子)
■出走するからには、なにが起こるかわからんよ──先週の平安Sは残念ながら5着。早々に手応えが怪しくなったように見えました。
小牧 そうやねぇ。中間はとにかくテンションが高くならんようにと思っていて、そこはうまいこと乗り切ってくれたんやけど、4コーナーではもう手応えがなかったから。逆に、よくあそこまで粘ったと思うわ。
──敗因はやはり気性面?
小牧 うん。1〜2コーナーではスムーズに外に出せて、3〜4コーナーもいい感じだったんやけど、気の悪さからか競馬を止めてしまうようなところがある。道中はホンマにいい感じだったんやけどねぇ。僕自身、自信満々のコメントを出していたから、みんなに迷惑を掛けてしまったなって。ガックリでしたわ。
──以前、レース間隔が詰まるのはあまり良くないとおっしゃってましたよね。気の悪さが出てしまったのは、そのあたりが原因なんでしょうか。
小牧 うん、僕はそう思う。2か月近く間隔が空いていた仁川Sが、なんせ楽勝やったから。ある程度、間隔を取って競馬を使ったほうがいいタイプやね。今後の予定はまだ聞いてないけど、大きいところでやれる力があるのは間違いないから、次も乗せてもらえるんやったら何とか巻き返したいね。
──続いてはダービーですが、サトノルパンでの参戦が決まりましたね。
小牧 NHKマイルCの少しあとから、「ダービーに行こうや」って言ってたんです。正直、2400mは乗りづらいやろうなぁとは思うけど、僕自身、この春は全然GIで関東に行けてなかったんでね。乗れることになってよかったです。距離が長いことはわかってるんやけど、出るからには何が起こるかわからんからね。
──サトノルパンについては、「NHKマイルCのレースぶりについて、小牧さんの見解を聞かせてください」というリクエストが数多くきています。
小牧 やっぱり引っ掛かったのがねぇ。まぁスタートを五分に出たら、ああなってしまうだろうなとは思っていたけど。わかっていたから、僕はスタートを一完歩遅らせて乗っていたんやけどね。
──「武豊騎手が小牧騎手にいろいろ聞いたと話していましたが、具体的にどういうアドバイスをしたのでしょうか?」という質問もきています。
小牧 ある程度の癖とか、調教は跨いでおいたほうがいいよとか、返し馬もけっこうカリカリするよとか。あの馬は、けっこう難しい口をしてるからね。なんせ口向きが硬くて。アドバイスといっても、月並みなことですわ。こうしたら走るよとか、そういうのは言わないです。あえて言わないのではなく、そういうのはあくまで個人の感覚なんでね。
──なるほど。小牧さんや武豊さんが乗ってなお、マイルでも掛かる馬ですから、2400mのペースでは難儀しそうですね。
小牧 そうやねん。でもね、スマイルジャック(08年2着)でああいうレースができたわけやし、ノーチャンスじゃないとは思ってるよ。
──スマイルジャックはサトノルパン以上に、乗り難しいといわれていた馬でしたものね。結果的に、完全なるマイラーでしたし。
小牧 ホンマにあの馬は難しかった。でも、ダービーのときだけは、なぜかハミが抜けたんですわ。なにが起こるかわからんというのは、そういうことです。あのときは『勝った!』と思ったからね。
──ここまでダービーには7回騎乗されていますが、スマイルジャックに限らず、“のちのマイラー”が数多く出走してくるレースですからね。
小牧 橋口厩舎の馬でけっこう参戦させてもらってるんやけど、みんなね、本質的にはマイルくらいの馬でしたわ。
──ペールギュント(05年15着)、アイアンルック(17着)、コティリオン(14着)、クラレント(15着)。確かにそうですね。橋口厩舎の馬ではありませんが、ダービー初騎乗となった04年のグレイトジャーニー(10着)もマイラーでしたものね。
小牧 そうそう。だから、折り合いに苦労する馬が多かったね。なかでもコティリオンが一番難しい馬で。
──NHKマイルC2着から、ダービーでも6番人気に支持された馬ですね。
小牧 うん。NHKマイルCでは、ケツからすごい脚で追い込んだ馬やけど、とにかく折り合いの難しい馬で。ダービーも覚悟して臨んだんやけど、いざ本番に行ったら、なんていうことなかった(笑)。
──ジョッキーにとってダービーとは、乗れば乗るほど重みを感じるようになるレースだとよく聞きますが、やはり小牧さんもそうですか?
小牧 そうやね。初めて乗ったときは、普通のGIとなんも変わらんと思ったからね。
──ダービーは唯一、検量室やパドックの空気もピリピリしていると聞きますが。
小牧 なんにも感じなかったです。当時はまだ、それほどすごいレースだという感覚がなかったんやね。辞めるまでに一度は勝ちたいとその重みを感じ始めたのは、ここ4、5年や。それまでは、僕にとって特別なレースではなかったね。
──いよいよ今年もそのダービーがやってきたわけですが、小牧さんのおっしゃる通り、競馬は何が起こるかわからない。最後に意気込みをお願いします。
小牧 (サトノルパンを管理する)村山くんは、「どうせ引っ掛かるんやったら、ゲートを出たら行ってもいいよ」なんて、冗談めかして言っとったけど(笑)。前に行かせてしまったら距離的に限界があるのはわかってるんでね。僕としては、できるだけソロッと、じっくり乗っていこうと思ってます。さっきも言ったけど、出るからにはノーチャンスではない。ひとつでも上の着順を狙って、全力で乗ってきますわ。
ひとつでも上の着順を狙って、全力で乗ってきますわ
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次回は、藤原英昭厩舎への久々の騎乗、池江寿厩舎での2戦2勝など、直近のレースを振り返りながらベストレース、ワーストレースを選定。5月18日のシェイクザバーレイ(4歳上500万9着)でコンビを組んだ、松永幹夫調教師との意外な思い出話も!