◆橋口調教師と池江泰郎元調教師の言葉
これまで19頭もの管理馬を日本ダービーに送り込み、1999年以降はほぼ毎年のように競馬の祭典に参加している橋口調教師。最高着順2着4回の成績を改めて振り返り、「俺はダービーに出す方法は知っているけど、ダービーを勝つ方法は知らない」と嘆いた。ダービーを勝つ方法…これは競馬界において最大のクエスチョンなのかもしれない。
「それは難しい質問やね。競馬は流れが向いて展開の恩恵を受ける馬がいれば、その一方で同じだけ不利を受ける馬もいる。ディープインパクトみたいに飛び抜けた馬じゃない限り、馬場、枠順、展開…うまくいくことなんて半分ぐらいしかないし、残り半分はどんなに能力がある馬でも力を出し切れず負けてしまうケースが多いから」
こんなことを言うのは2005年にディープインパクトでダービーを勝った池江泰郎元調教師だ。そのうえで「ダービーを勝つのは非常に難しいこと。それを成し遂げるには、まずは馬を出走させることが重要。出走しない限り勝つことはあり得ないし、出ることさえできれば運が向くこともある。我々調教師がダービーを勝つためにできることといえば馬を出走させ、そして、その馬を万全の状態に持っていくことなんじゃないかな」と分析した。
現役最多となる19頭もの馬をダービーに出走させながら「ダービーを勝つ方法は知らない」と語る橋口調教師だが、実は誰よりも、ダービーを勝つために一番重要なことを実践していたことになる。ワンアンドオンリーで臨む20頭目のダービーへ「調教師人生の集大成を見せるつもりで臨む」と言い切るまでの覚悟を見せたホースマンに、そろそろ競馬の神様がほほ笑んでもいいころだろう。
(栗東の坂路野郎・高岡功)