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さらに父の名を高める/日本ダービー

  • 2014年05月31日(土) 18時00分


◆「父フジキセキだから距離が…」というのは意味がない

 人気の中心になる皐月賞馬イスラボニータ(父フジキセキ)の、日本ダービー制覇の可能性はどのくらいあるのだろうか?

 競馬をささえる全国の、さまざまな世代の、さまざまなファンの支持は正しいことが多い。グレード制が敷かれて30年、日本ダービーの1番人気馬は【17-4-2-7】。22のG1競走のなかで、圧倒的な勝率を誇っている。皐月賞とコースこそ違うが、400mの距離延長だけ。格好の参考レースがあるからである。

 この間、皐月賞の内容を吟味、評価されて日本ダービーで1番人気に支持された皐月賞馬は実に【8-1-1-1】。勝率73%、連対率82%に達している。イスラボニータが1番人気に支持されるなら、きわめて心強いここまでの記録を当てはめてもいい。

 イスラボニータは東京芝4戦4勝。距離延長に疑問のあるスピード系では苦しい1800mで3勝している。2歳コースレコードの1分45秒9も含まれるから、最初からマイラーにはとどまらない広がりを示していたのである。

 皐月賞の1分59秒6は、速くもなし遅くもなしだが、ボコボコしたタフなコンディションを敗因にあげたライバルも少なくない。マイラー色の濃いスピード型というより、数多いフジキセキ産駒の中では、レコードの菊花賞を3分02秒9で2着し、ディープインパクトのジャパンCで2着に健闘したドリームパスポートに似た印象を与えた勝利だったろう。配合に似た部分もある。やっぱりマイラーにとどまらない。

 カッーとして行きたがる気性ではない。もちろん、体全体は父フジキセキを強く思わせるが、強固な重量感さえ漂わせた父より、スマートでのびやかである。フットワークはあくまでしなやかである。きわめて優れた中距離タイプだろう。フジキセキ産駒は…、などとくくることは、マイラー型が大半としてさえ最初から意味のないことであり、ダートの2000m級を中心にG1を含む重賞を9勝もしたカネヒキリ(今年の新種牡馬)、2400mのドバイシーマクラシックを制したサンクラシーク、桜花賞に続き2400mのオークスでも2着したエフティマイア、前出のドリームパスポートなど、父フジキセキだから距離が……などというくくりにとどまらない産駒が、ほかの種牡馬と同じようにいっぱいいる。

 フジキセキの種牡馬としての本当の評価は、自身を超える産駒を送ることができるか。さらには、父とは距離適性など少し異なるタイプの代表産駒を送ることができるかに集約される。父を超えられないミニ・フジキセキを何頭も送ることではない。イスラボニータは、もうクラシック皐月賞を制しているから、父を超え、父の評価をさらに高める役割も果たせそうでもある。もし、日本ダービーを制覇できるならば。

 イスラボニータの強敵は、皐月賞組ではワンアンドオンリーと、トゥザワールドであるのは間違いなく、凡走組では距離延長と、芝のいい東京が合いそうなアドマイヤデウス

 最近、侮れない別路線組では、ハギノハイブリッドはぜひ買いたい。相手の筆頭にも評価したい。この時期に急速な成長を示すのが、クラシックタイプであり、それがサンデーサイレンス系と、ブライアンズタイム系である。とくにブライアンズタイム系は、地味に見せながら、サニーブライアンなどが示したように一気に強くなる馬が多い。再三の乗り替わりは、ダービー好走馬にこれまでは少なかったが、いろんな意味で時代は変わってきた。ダービーはずっと人間模様と重なり合いながらすすんできたが、これからもそうとは限らない気がするのは仕方がないのだろう。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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