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ハービンジャーは救世主となるか

  • 2014年06月13日(金) 12時00分


◆母父としてのサンデーサイレンス

 サンデーサイレンスが初の日本ブルードメアサイヤーに輝いたのは2007年。以来、昨年まで7年連続で首位を守っている。むろん、今年も首位を独走中。獲得賞金、勝利回数ともに傑出した数値で、まだまだ連続記録を伸ばすことだろう。

 だが、今年のアーニングインデックス(6月12日現在)は、全般[1.40]、重賞[1.03]。お世辞にも優秀な数値とは言えない。ちなみに2007年は全般[2.51]、重賞[3.10]、2008年は全般[2.31]、重賞[2.57]。この時代に比べるとかなり数値が下がっている。

 2007年はアドマイヤムーン(ジャパンC)が、2008年はスクリーンヒーロー(ジャパンC)が活躍した年だった。前者の父はエンドスウィープ、後者の父はグラスワンダー。どちらも決して派手な種牡馬ではなかったが、母の父サンデーサイレンスはこれらを相手に大物を出す神通力を持っていた。

 ところが、最近は母の父サンデーサイレンスから生まれた馬に、どうも以前のような大物感がない。相手にする非サンデーサイレンス系種牡馬の影響力の低下、高齢化、予想外の不振などが、その背景にあるのは確かだろう。

 キングカメハメハはトゥザワールドを今春のクラシックに送り込んだが、昨年のコディーノと同じく結局は無冠に終わった。ここ数年、キングカメハメハ産駒はクラシックを勝てない状況が続いている。シンボリクリスエス、クロフネはクラシックの底力が足りず、ジャングルポケット、ホワイトマズルは高齢でピークを過ぎた。チチカステナンゴも期待を大きく裏切っている。

 それらの一つひとつが重なって、アーニングインデックスをここまで下げたのか。それとも母の父サンデーサイレンスが、以前のような神通力を失ってしまったのか。いずれにしても、非サンデーサイレンス系の大物種牡馬の発掘が、今後の急務となるだろう。そうでないと、サンデーサイレンスが入り込んだ日本の名牝系が台無しになってしまう。

 今年の新種牡馬として登場するハービンジャーに、果たして非サンデーサイレンス系の救世主となる資格があるのか。来週から新種牡馬について触れたいと思うが、そろそろ救世主が誕生してくれないと困る状況にある。

血統評論家。月刊誌、週刊誌の記者を経てフリーに。著書「競馬の血統学〜サラブレッドの進化と限界」で1998年JRA馬事文化賞を受賞。「最強の血統学」、「競馬の血統学2〜母のちから」、「サラブレッド血統事典」など著書多数。

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