◆血統的な重たさをサンデーで中和したい
社台グループが導入し、今年の新種牡馬の目玉となっているハービンジャー。その競走成績は文句のつけようがない。古馬になって本格化し、夏の欧州最大レース“キングジョージ”において、同レース史上最大着差の11馬身差をつけてレコードで快勝している。
問題は、欧州の重厚なステイヤー血統の凝縮になっている点。そこが評価の分かれるところだが、個人的には、サンデーサイレンスがこの手の欧州のステイヤー血統と相性が良かった点に、注目したい。
最初の成功サンプルとなったトニービンも、その5代血統表には古き良き時代の欧州のステイヤー血統が、これでもかと言わんばかりに詰まっていた。高速馬場にも対応し得るスピードや素軽さも伝えたトニービンだったが、本来は重厚かつ晩成のステイヤー血統だったのである。
サンデーサイレンスとこのトニービンとの配合で、早くにアドマイヤベガ(日本ダービー)が誕生。次いでニジンスキー(英三冠馬)との配合でダンスインザダーク(菊花賞)、マルゼンスキー(父ニジンスキー)との配合でスペシャルウィーク(日本ダービー)が誕生した。
それが中期以降のハーツクライ(有馬記念)、マンハッタンカフェ(菊花賞)、ネオユニヴァース(日本ダービー)、ディープインパクト(三冠馬)といった大物の誕生につながっている。サンデーサイレンスの本質は仕上がり早の短中距離血統。自身にないものは配合相手から巧みに取り込んで、スピード、スタミナ、成長力の3拍子に富む万能の名馬を続々と輩出したのだった。
むろん、北米のライトな血統が相手でも活躍馬を出している。だが、それらは早熟馬や短中距離馬で終わることが多く、芝の中長距離大レースとはほとんど無縁だった。
サンデーサイレンスの後継種牡馬たちも、同じ特徴を見せている。社台グループが欧州のステイヤー種牡馬やステイヤー牝系に、今もこだわり続ける理由がそこにある。
ハービンジャーの父はデインヒル産駒のダンジリ。サンデーサイレンス系がデインヒル系と相性が良かった点も見逃せない。サンデーサイレンス系牝馬が相手なら、血統的な重たさをうまく中和してくれるだろう。
ただし2歳の早くに答えを出せる血統ではない。じっくり見守る辛抱強さが必要となってくる。良血のサンデーサイレンス系牝馬を相手に、名に恥じぬ答えは出してくれるように思う。