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絶対絶命でこそ燃え盛る勝利への執念/トレセン発秘話

  • 2014年06月25日(水) 18時00分


◆この宝塚記念はJC以上に勝たなくてはいけないレースなのだ

 ジェンティルドンナは昨年の雪辱を果たせるのか!? 第55回宝塚記念の焦点のひとつだ。ジャッジマンとして名乗りを上げたのは“栗東の坂路野郎”改め?“栗東のジェンティル密着野郎”高岡功記者。「トレセン発(秘)話」超拡大版で、現役最強牝馬の本質に迫る--。

 昨年は1番人気3着。ゴールドシップだけでなく、伏兵ダノンバラードにも先着を許した。果たして屈辱の舞台でリベンジ走なるか否か…。その可能性を測るためには、2年連続の参戦となったドバイシーマクラシックのレースぶりを再検証する必要がある。

 スムーズに好位につけながらセントニコラスアビーを捕らえられず2着に負けた昨年から一転、馬群の中に閉じ込められる絶体絶命の状況から強引に外に持ち出して劇勝した今年のレースぶりを、他のレースに参戦していた現地の日本人関係者たちはどう見たのか?

「負けていたら叩かれていただろうなって感じのすごい乗り方だったね。でも、あの馬はたとえ流れが遅くても、ああやって苦しい位置で競馬をした方が力をより発揮できるのかもしれない。そういうレースをすることにムーア自身も迷いはなかったんじゃないかな」

 こう振り返ったのはドバイデューティフリーでジャスタウェイを世界一に導き、自身も京都記念(6着)でジェンティルドンナに騎乗した福永だ。好位の外で馬を前に置かない形で運んで伸び切れなかった京都記念の競馬ぶりは昨年のドバイシーマCの敗戦にも通ずるものがある。逆に今年のドバイシーマC、さらにはオルフェーヴルをはね飛ばした一昨年のジャパンカップはまさに絶体絶命の位置からの逆襲劇だった。厳しい状況でこそ燃え上がり、“魂の走り”を見せる…これこそがジェンティルドンナの真骨頂なのかもしれない。

「2年連続で海外に行って結果を残すというのはすごいこと。能力があって、調整もうまくいったのはもちろんだけど、馬の精神力がそれだけ強いということ」と福永も何より気持ちの強さを絶賛している。

 ドバイワールドカップにホッコータルマエで参戦していた西浦調教師も「あれだけ馬群に閉じ込められても、そこから抜け出してくる根性が素晴らしい。あの馬はすんなりした競馬より、厳しいところでレースをした方が走るんじゃないかと思った」と福永と同意見。「後ろを突き放したジャスタウェイ(ドバイDF)はとてつもなく強かったけど、それとは違った意味でジェンティルドンナの勝ちっぷりも強かった」と称賛した。

 フルゲートに満たない今年の宝塚記念。国内トップが顔を揃えたとは決して言えないが、ゴールドシップにはテン乗りで新味を出すことに定評がある横山典、ウインバリアシオンにはかつての主戦でもあった岩田が騎乗となればジェンティルドンナ自身にとっても楽な戦いにはならない。しかし逆境に置かれてこそ、よりポテンシャルを発揮できるのがこの馬の本質なのだとすれば、3頭での火花が散るような肉弾戦はむしろ歓迎ともいえようか。

 ジェンティルドンナが現役最強牝馬であることは誰も疑いを持たない。ウオッカ、ダイワスカーレット、ブエナビスタなどを加えた最強牝馬論争は決して結論が出る類いのものではないにしても、宝塚記念を勝てば海外も含めた総獲得賞金は15億円を突破。ブエナビスタを超え、「歴代牝馬最多獲得賞金ホース」となり、“史上最強牝馬”の称号にまた近づくことになる。

 なかには「ジャスタウェイにしても、ジェンティルドンナにしても、ドバイの軽い芝ならあれだけ強い競馬を見せられるということ。でも、それが力のいる阪神の宝塚記念にそのままスライドできるかというと、それはまた違う」(松田国調教師)という意見もある。

 確かに「右回り+力のいる馬場+休み明け」という“3点セット”はジェンティルドンナにとってこれまで好結果の出ていない条件で、その全てが揃ってしまったこのグランプリは、舞台設定という意味でも楽な条件ではない。

 しかし、それを乗り越えた時にこそ、賞金面だけではない、真の意味での史上最強牝馬の称号により近づくことになる。秋には最大目標のJC3連覇が控えているが、こと最強牝馬論争の核になるためには、この宝塚記念はJC以上に勝たなくてはいけないレースなのだ。
(栗東のジェンティル密着野郎・高岡功)

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