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進化した「マツクニ流」トレ/吉田竜作マル秘週報

  • 2014年06月25日(水) 18時00分


◆進化の時を迎えている松田国厩舎のトレーニング

 アスリートに例えられることが多いサラブレッドだが、すべてに当てはまるわけではない。心身ともに成熟した古馬はそう呼ぶにふさわしいにしても、まだ成長途上、特にこの時期の2歳馬はとてもアスリートと呼べる段階には達していないものだ。

 それでも来春のクラシックに出走するために目の前の一戦を戦いつつ、その先にあるアスリートとしての完成を目指して人は考え、馬は耐える。厳しいトレーニングに耐えた先にしか栄光はないのだ。

 しかしトレーニングのアプローチの仕方は厩舎はもちろん、個人によって様々。また経験を重ねることでそのやり方が変わってくることもある。

 松田国厩舎といえば、ひと昔前は「スパルタ」のイメージが強かった。キングカメハメハ、クロフネ、タニノギムレット、ダイワスカーレット…筋骨隆々な活躍馬を続々とつくり上げた坂路を中心としたハードなトレーニングが印象的だ。

 しかし「スパルタ」にはネガティブなイメージもついて回る。日本ダービーを制したキングカメハメハが神戸新聞杯を最後に早々と現役を去り、タニノギムレットもダービーが最後に…。「ハードな調教が馬にダメージを与えた」イメージが強く残ってしまった。

 もちろん、これら大物の早期引退の原因は松田国厩舎のトレーニング方法だけにあったのではない。放牧先での調教も少なからず影響はあっただろう。が、競馬ファンやオーナーサイドについて回るのは厩舎のハードトレについてのマイナスイメージ…。ここ数年の松田国厩舎の不振はその影響もあったかと思う。

 しかし、このマイナスイメージを乗り越えるため、松田国厩舎のトレーニングは今、進化の時を迎えている。好例は今年のダービーにも出走した京都新聞杯の覇者ハギノハイブリッドだ。実を言うとこの馬、ダービーを終えて1か月近くたつ今も栗東トレセンで調整されている。その理由を松田国調教師自身が明らかにしてくれた。

「結果(13着)は良くなくても、ダービーが厳しい競馬でしたから。関節や靱帯、筋肉に疲労が残っているはず。そこでいきなり休ませてしまうと、体が硬くなってしまうんですよ。そういう状態のまま秋に向けてピッチを上げると、どこかに無理がきてしまう。そうならないように厩舎に置いて徐々に体を冷ましていくよう調整しています。週に1本のキャンターと厩舎周りの引き運動。今はそこまでペースを落とせています」

 これまでのトレーニング→休養→トレーニングのサイクルは松田国厩舎にもあったはずだが、現在はよりハッキリとさせる形になったわけだ。面白いもので、これに似たパターンで調整しているのが松田博厩舎。「レースの後はしばらく厩舎で様子を見てから放牧に出す」のが基本で、かなりの割合で厩舎でのクールダウンを行っている。こうした適度な休息が松田博厩舎所属馬の息の長い競走生活を支えているのだとすれば…松田国厩舎の変化はいい方に向いているのではないか。

 ココスタイル(牡=父ネオユニヴァース、母ココシュニック)とスマートシルフ(牡=父マンハッタンカフェ、母ウッドウインド)。松田国厩舎は今週、2頭の2歳馬のゲート試験を予定している。「スタートが速いようなら、このままデビューさせることも考えている」とはトレーナーで、2頭のどちらかが松田国厩舎の一番やりとなる可能性が高い。より進化した「マツクニ流」が秋のハギノハイブリッド、そしてこれら2歳世代の来春のクラシックの活躍で証明されれば…再び松田国厩舎の天下がやってくるかもしれない。

※本日は『トレセン発秘話』も更新されております。下部のバックナンバーからご覧ください。

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