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注目の新種牡馬・エンパイアメーカー

  • 2014年06月27日(金) 12時00分


◆芝の大物が誕生する可能性も

 今年の新種牡馬で最も注目度が高いのはエンパイアメーカーだ。アメリカで7シーズン供用され、その秋、日本軽種馬協会が購入。翌2011年春から日高で供用を始めたが、この時点でかなりの実績を残していた。

 2012年になると北米に残してきた産駒が一段とグレードアップ。ロイヤルデルタ(BCレディーズクラシック)、ボードマイスター(アーカンソーダービー、ケンタッキーダービー2着)、インランジェリー(スピンスターS)らが相次いでGIを勝ち、堂々の北米リーディングサイヤーの座に就いた。

 日本で供用中の種牡馬が北米リーディングサイヤーに輝いたのは、1996年のフォーティナイナー以来2頭目のことである。2014年6月26日現在、北米のGI勝ち馬はすでに11頭を数える。うち9頭が牝馬で、典型的な“メス血統”の特徴を見せている。

 自身は長距離のベルモントSの覇者だが、ミスタープロスペクター系らしく産駒は仕上がりに優れ、2歳の早くから活躍している。それでいて成長力も備えており、3歳の秋、古馬になっても活躍する産駒が多い。その舞台もダート、オールウェザー、芝と多岐にわたり、距離も1400m前後から2000m前後を得意としている。フォーティナイナー級の成功は間違いないだろう。

 ただ、そのフォーティナイナーは日本の芝で伸び悩み、後にダート交流重賞の申し子的な存在となって大成功した。エンパイアメーカーもこのフォーティナイナーと同じ道を歩むことになりそうだ。かつて日本の芝で大活躍したミスタープロスペクター系も近年は勝ちあぐみ、ダートに転じて素質を開花させるケースが目立つ。

 エンパイアメーカーも芝はいくらか力のいる馬、雨で渋った馬場が向いている。しかし近年はダート路線が整備拡充され、無理に芝にこだわらなくても賞金と名誉を手にすることができる。早めに芝に見切りをつけ、ダートに向かう馬が多くなるかもしれない。

 配合的には、急増するサンデーサイレンス系牝馬がうってつけだ。日本軽種馬協会所有のため付けるのは日高の牧場が中心。そのぶんハンデを抱えるが、日高にもフジキセキ、スペシャルウィークといったサンデーサイレンスの後継種牡馬を父に持つ繁殖牝馬が増えている。これらとの配合から、芝の大物が誕生する可能性は大いにあるだろう。

血統評論家。月刊誌、週刊誌の記者を経てフリーに。著書「競馬の血統学〜サラブレッドの進化と限界」で1998年JRA馬事文化賞を受賞。「最強の血統学」、「競馬の血統学2〜母のちから」、「サラブレッド血統事典」など著書多数。

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