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人事をつくして天命を待つ

  • 2014年07月03日(木) 12時00分


ゴールドシップと横山典弘騎手の人馬一体に思う

 なしうるかぎりをつくしたから得られる心境、うろたえず、あわてず、その境地をかみしめる、人事をつくして天命を待つとはこういうことではないだろうか。ただ、これだけのことをしたのだからそれ相応の結果が得られるという、そんな計算が成り立つことはない。天命を待つとは、ひたすら祈る心静かな境地であって、とても個人の力のおよぶものではない。

 宝塚記念でゴールドシップ連覇の手綱を取った横山典弘騎手は、道中ずっと、「お願いします、最後まで頑張って下さい」という思いだったと述べた。我が強すぎて怒ったら反抗して言う事を聞かないゴールドシップに、どう走りやすい雰囲気をつくってあげるか。それをつかむため、再三西下していた。そして気持優先の調教を積むことでゴールドシップの心をつかみ、人馬の信頼関係を強くしていったのだった。持てる力を出しさえすれば、ファン投票第一位の期待にこたえることができる。そうと分かっていても、この難儀な事態を乗り切るには、「困っても困らない」「思いを新たに決意をする」これを飛躍の土台石としていかねばならない。

 要は考え方、心をせまくせず、困難なときにこそ断じて行ない、夢を拓く力強い道を歩んでいく、それがあったからこそゴールドシップの勝利は生まれ、横山典弘騎手に天は味方したのだ。言い古された人馬一体という言葉を、ここでもう一度味わってみたい。どこまで人が馬の気持を掴んでいるか、競馬の基本がそこにあるからだ。

 競馬では、人が馬の性格をどうつかんでいるかが大きい。かつてラジオたんぱ賞(今のラジオNIKKEI賞)をビワタケヒデで勝ったとき、藤田伸二騎手は「とても素直で子供っぽいところがあるが、可愛い奴で勝たせてあげたかった」と語っていた。ビワハヤヒデ、ナリタブライアンという偉大な兄たちの血を受け期待は大きかったが、レースに集中できずにいたのだった。藤田騎手は慈しみの心を持って接し続け、勝利に導いたのだった。

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ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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