西園厩舎の代表牝馬となれるか、ラッフォルツァート/吉田竜作マル秘週報
◆母も担当していた甲斐助手「人が馬房の前に来ると、自分から顔を出してなでてもらおうとするんだ」
紹介するだけしておいて…というのも情けない。今回はあえてこの話題を。当コラムで期待馬として取り上げたリバイブビート(牡=父タイキシャトル、母トウホーキセキ・大根田)とタガノレジェンド(牡=父ウォーエンブレム、母フーラクサ・松田博)が揃って“惨敗デビュー”となった(リバイブビート=12日中京芝1400メートル15着、タガノレジェンド=13日中京芝1600メートル12着)。稽古の良さが実戦に直結しない結果となったわけだが、ここまで負けてしまうと逆に身体能力が原因とは考えにくいもので…。
リバイブビートの大根田調教師は「わざわざ紹介してもらったのに申し訳ないな。ソエが出るまではなかったけど、ちょっと出そうな感じではあったんだ。体の具合がちょっと悪いと他のあちこちまで気になる人っておるやん。この馬もそんな感じ。スタートからもう他馬を気にしてレースにならなかった」。
一方、タガノレジェンドの松田博調教師は「騎手は脚を取られたと言っていたが、まあ走る気がなかったよな。競馬に行けばもう少しピリッとするものと思っていたが、競馬場に着いても栗東にいる時のまま(苦笑)。まあ、ウォーエンブレムの子だし、うるさくなっていないのはいいことさ。使ったことで気合も乗ってくるだろうし、今週の中京で改めて」と気合を入れ直していた。
ともに「メンタル面」が敗因と捉えているのだが、初めての実戦で管理馬がどのような“化学変化”を起こすのか? 松田博調教師のようなベテランでも予測するのは難しい。おとなしければストレートに能力を発揮できるわけでもなく、うるさいからといってレースで消耗し切るわけでもない――生き物相手の難しさを痛感させられる2鞍だった。
もっとも体を張って愛馬を扱う厩舎スタッフにとっては「おとなしいに越したことはない」。日曜(27日)の中京芝1400メートルでデビューを予定しているラッフォルツァート(牝=父グラスワンダー、母コスモベル・西園)はまさにその典型といっていい馬で、西園調教師にとっては母のコスモベルも思い入れの強い馬だった。
「外国のトレーニングセール出身だったのにおとなしい馬でね。おそらく、あまり期待されていなかった分、セールに向けての調教もバリバリやっていなかったんじゃないかな。そこで完成していなかったからこそ、外国産の牝馬としては息の長い活躍(現役時5勝)をしてくれたんだと思う」と振り返る。
この世界にいると「悪いところばかりよく似る」のが半ば常識となっているが、この馬の場合は「お母さんと一緒。おとなしいし、かわいいんだ」と師も目尻を下げる。
母も担当していた甲斐助手に至っては「目に入れても痛くない」とか。「人が馬房の前に来ると、自分から顔を出してなでてもらおうとするんだ。マイネルのところだから、かなり調教をハードにやられているはずだけど、口もきれいだし、気性もおとなしいまま。本当にかわいいよ」とベタぼれ状態だ。
ただかわいいだけの馬ではないことは田中助手が証言してくれた。「初めての追い切りの動きが良かったし、なかなかいい馬だよ。ウチもそろそろ勢いをつけていきたいし、この馬で小倉2歳Sに向かいたいね」
名門と呼ばれる厩舎は、ある一頭の牝馬から繁栄した歴史を持つことが多い。西園厩舎にとって、このコスモベル→ラッフォルツァートの母娘がそうした存在になるかもしれない。