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2014セレクションセール

  • 2014年07月23日(水) 18時00分
セレクションセール

セレクションセールの風景



ハーツクライ産駒がひじょうに好調で今セール最大の注目種牡馬となった

 先週開催されたセレクトセールは大盛況に終わったが、ここ日高の景気を占う上でより重要視されるのがセレクションセールだ。日高を中心に「選ばれた1歳馬」が数多く上場されること、先週のセレクトと比較すると価格が比較的安いことなどから、毎年多くの購買者が訪れる。当初はセレクトセールが結果的に高止まりの価格になり、予算オーバーで買いそびれた購買者がここを狙って来場するのではとも言われていた。春以来、JRAブリーズアップセールに始まり、2歳トレーニングセール、セレクトセールとセールの成績が順調に推移していることも好結果を期待させる追い風になった。

 21日(月)は終日展示に費やされ、22日(火)がセリ本番である。午前10時に予定通りセリが開始された。名簿上では256頭だが、8頭欠場しており、上場実頭数は248頭。昨年よりも24頭の増加で、前週のセレクトセール1歳(255頭)とほとんど変わらない。

 ただ、ここにはディープインパクト産駒はおらず、その代わり、日高で人気の高いエンパイアメーカー産駒が28頭も上場されることになっている。また今注目のハーツクライ産駒も14頭の上場が予定されていた。

 セリは前半がやや低調に推移し、後半になって盛り返した印象だが、途中で何度か主取り馬の続く場面が見られた。もっともリザーブ形式でのセリだから、傍目には売れているかいないかが判然としない。最初に場内から声がかかると鑑定人がそれを取り上げ、高額落札が予定されている馬であっても意外な低価格からスタートし、延々と小刻みに価格が上昇する場面も多々あった。因みにこのセレクションセールでは、リザーブ価格に達しなくとも販売者の判断で売却することができる変則的ルールになっている。例えば、リザーブを700万円と予定していても、まず500万円と一声かかり、そこから価格がなかなか上昇しない場合などには、550万円、600万円といった段階で販売者が手放しても良いことになっているのだ。

 これは「価格がついた時点で売っておきたい」生産者の心理によるものだ。無理してリザーブ価格まで引き上げて(自分もセリ上げることが可能)、その結果、購買者が降りてしまえば元も子もなくすると考えるからである。ここで売れ残ってしまっては、今後、サマーセール、オータムセールと季節が進むにつれ1歳馬の価格は下落して行くのが通例だから、つい弱気になる。長らく“買い手市場”の傾向が続いていることも安売りに拍車をかけている。

 結果的には248頭(牡187頭、牝61頭)中、154頭(牡120頭、牝34頭)が落札され、売却率は62.10%。前年よりも1.74%減少した。上場頭数が24頭増加したものの、落札頭数は11頭の増加にとどまった。売り上げ総額は税込で18億5295万6000円。落札馬の平均価格は牡が1275万6600円、牝が947万5412円で全体では1203万2182円であった。総額では前年比1億82万1000円の増加だが、平均価格は22万510円の微減である。

 ただし、今春以来、消費税が5%から8%に上昇しており、税込価格での比較には数字の偏差が生じる。より厳密にデータを比較するためには本体価格での数字を並べた方がより実態に近づくのではないか。

 なお、最高価格馬は192番「アルカイックレディの2013」(牡栗毛、父ハーツクライ、母アルカイックレディ、母の父Mr.Greeley)の4644万円(税込)。浦河・(有)梅田牧場の生産・販売申込者で飼養者は(有)チェスナットファーム。落札者は永井啓弐氏。

「アルカイックレディの2013」

最高価格馬となった「アルカイックレディの2013」


 このセールではハーツクライ産駒がひじょうに好調で、同馬の他にも225番「タイキシャインの2013」(牡栗毛、母タイキシャイン、母の父タイキシャトル、生産・販売申込者ともに山際辰夫氏、飼養者・オークツリーファーム)が3780万円、179番「ユウサンポリッシュの2013」(牡鹿毛、母ユウサンポリッシュ、母の父エルセニョール、生産・販売申込者ともに(有)ガーベラパークスタッド)の3348万円と高額馬が複数出た。上場14頭中11頭が落札され、ハーツクライ産駒だけで2億2582万円(税込)もの売り上げを稼ぎ、今セール最大の注目種牡馬となった。

「アルカイックレディの2013」

好調だったハーツクライ産駒「アルカイックレディの2013」の落札場面


 一方、28頭もの上場馬を送り出したエンパイアメーカーは16頭の落札にとどまり、計1億7971万円で平均価格は約1123万円に終わった。因みに現1歳世代は日高だけでも160頭を超える産駒が名簿に記載されており、サマーセールにもかなりの多頭数が上場されそうだが、今後果たしてどんな売れ行きになるものか。

 セレクションセール終了後、木村貢・日高軽種馬農協組合長は「75点くらいですね。平均価格は微減でも購買者の方々には昨年より11頭多く落札して頂いたことにまず感謝申し上げたい」と言い「上場頭数が増えたことで売却率はやや下がるかも知れないとは考えていました。今年はエンパイアメーカー産駒により多くの販売機会を作るためにと配慮した結果この頭数になりましたが、本来はこれより1割くらいは少ない方が良いと思っています」と続け「サマーセール、オータムセールは今年好調だった2歳トレーニングセールに向けて仕入れを行なう育成業者などが買い付けをして頂けると期待しています」と結んだ。

木村貢・日高軽種馬農協組合長

木村貢・日高軽種馬農協組合長「昨年より11頭多く落札して頂いたことにまず感謝申し上げたい」


 日高の次回のセールはサマーセール(8月下旬)になる。その前に八戸市場が控えている(8月5日)が、先日届いた名簿によれば八戸は上場予定頭数が38頭となっており、うち半分が北海道からの遠征組である。昨年70頭いた上場頭数が今年はほぼ半減に近い。青森がどんな状況になっているのか何とも気になる。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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