インを引いた馬はそれだけで苦しかった
この中京記念の上位は「7、11、5、6、10、16番人気…」。札幌のエルムSは別定戦ながら、上位は「3、5、10、12、13人気…」の決着だった。
夏の重賞はハンデ戦が多く、またコースも大きく変わるから、まるでファンの興味を引きとめるかのように難解な結果をもたらすことが多いが、先週の函館記念が「2、8、7、9、12、15、11、16番人気…」。函館2歳Sも「4、11、2、12番人気…」。
七夕賞も、ラジオNIKKEI賞も、CBC賞も伏兵が上位に並び、人気馬が上位を守ったのはダート短距離のプロキオンSくらい。難しいレースが連続している。
6歳
サダムパテックの勝った「中京記念は」、これで1999年以降、1番人気馬が「15連敗」継続中となった。かつて、夏の福島の「七夕賞」が1番人気馬26連敗の不滅の記録を誇った時期があったが、中京記念の行われるコースは、開催の後半になりちょっと渋ると、コースロスなど関係なく最後の直線は大外に回った馬だけが伸びる。インを引いた馬は、今回、途中まで1番人気だった
クラレント(父ダンスインザダーク)のように最初から好走できない危険が大きい。
外枠の伏兵評価にとどまった馬は、最初から思い切って外に回ることができる。多くの人気馬はそれはわかっていても(今回のサダムパテックや
ミッキードリームのように)一番外に出すわけにいかない。それで勝つならいいが、結果、外に回ったコースロスが敗因になったら大変である。
かつて、七夕賞の人気馬が連敗した形とまったく同じになってきたから、中京記念の1番人気馬(上位人気馬)苦戦は、来年以降もつづくことだろう。といって、梅雨どきで明らかに馬場が渋っているのに内を通った馬のほうが有利では、さすがに不自然すぎて良くない。雨が降り、芝が少し傷ついたシーズン末の開催は、タフな芝になって当然である。
6歳サダムパテック(父フジキセキ)は、4歳秋、2012年のマイルCSの勝ち馬であり、今回のメンバーの中だけではなく、中京記念が夏のハンデ戦に変わって以降、初めてのGI馬の出走だった。前回の安田記念が17頭立て17番人気。2走前の中山記念も15頭立て15番人気だったとはいえ、前回は0秒7差7着、2走前も1秒0差の7着。さすがにここなら能力上位だったということか。
人気上位馬ではないから、後方馬群の外を気楽に追走して直線勝負。ひかえて進み直線一気は近年の田中勝春騎手の重賞勝ちのパターンで、前回の重賞制覇となる約1年半前のファルコンSのインパルスヒーローも、中京コースだった。まだ2000mだった2010年のシャドウゲイトの中京記念もこのコース。最近の重賞勝ち4つのうち3勝が中京に集中している。
サダムパテックはサマーマイルシリーズの初戦を制し、関屋記念、京成杯AHは出るだけで1-2ポイント加算すればチャンピオンになれる可能性が生じたが、陣営にそういうせこい展望はなく、このあとは夏の放牧に出て、秋のマイルCSが目標という。実際、関屋記念、京成杯AHは、1分37秒1で決着した中京記念とは「5秒」は異なるだろう超高速レース。そこに重い負担重量で出走するのはきびしい。GIを含め、重賞5勝馬となったサダムパテックの復活をたたえ、秋のビッグレースでの好走を期待したい。
昨年、13番人気で2着した7歳ミッキードリーム(父キングカメハメハ)は、今年も11番人気の低評価で2着に突っ込んできた。連続して中京記念の波乱の準主役となった同馬は、4歳秋に朝日CCを勝って以降、約3年間の成績【0-2-2-19】。重賞で好走するのはこの中京記念「4着、2着、2着」だけだから、難しい馬である。ハンデは56キロだから軽くもない。少しタイムのかかる中京記念でこそ、だったのである。
まったく同じ理由で、この2年半の重賞成績【2-0-1-12】。ほかはダメでも中京記念2連勝(ともに5番人気)だけが光っていた
フラガラッハ(父デュランダル)は、渋り気味の稍重馬場が伝えられ、外を回った馬だけが上位にくる馬場状態が明らかになるにつれ、どんどん人気上昇。直前にとうとう1番人気(5.3倍)になってしまった。
「(久々のマイル戦で)うまく脚をためられなかった」(高倉騎手)は、まったくその通り。サダムパテックとほとんど同じような位置にいたが、GI馬にしては気楽な7番人気評価の勝ち馬に対し、3連覇のかかるフラガラッハはあまり置かれるわけにはいかないから、気合を入れつつの追走になってしまった。同じように大外に持ち出したが、道中での息の入れ方、楽のさせ方が異なっていた。反応できずに0秒8差の10着。体調は昨年以上とも映ったが、好走に条件のつく追い込み一手型にとり、予想外の高い人気が、思われたより辛い立場となったのかもしれない。
サトノギャラント(父シンボリクリスエス)は、渋った馬場とあって最初から追走に苦しんだため、4コーナーまでインでコースロスを避け、直線だけ外に出す苦しい戦法を選んだが、伸びたのは一瞬だけ。渋馬場では…が改めてはっきりした。関屋記念向きだろう。
好仕上がりとみえた
ダイワマッジョーレ(父ダイワメジャー)は、渋馬場の巧拙というより、小型馬だけに57.5キロでこの馬場では動けず、追い比べに持ち込めなかった。
惜しかったのは、4歳
マジェスティハーツ(父ハーツクライ)。一旦は勝ったかとみえたが、外の2頭が併せ馬になったように伸び、寸前にかわされてしまった。名コンビの森騎手とはこれで【2-3-1-1】。春の新潟大賞典のクビ差2着もあれば、神戸新聞杯2400mの2着もある。こなせる距離の幅は広い。内にもぐりこむように小差4着した
ブレイズアトレイル(父ダイワメジャー)とともに、もうそろそろ重賞制覇が実現しそうである。