あの闘莉王が“闘志”注入デスティーノトップ/吉田竜作マル秘週報
◆長らく続いた西高東低の勢力図に変化が…
夏競馬の総括と言うにはちょっと早いが、栗東でも気づく人が増えてきた“ある異変”の話題をお伝えしたい。
これまで栗東のキュウ舎は小倉にはない距離、長い直線を求めて新潟に2歳未勝利馬を積極的に遠征。一昨年は2歳未勝利戦に14頭も送り込んでいたのだが…。昨年はわずか2頭にとどまり、今年も2歳未勝利戦はフルゲートの大盛況。新潟は関東ブロックとなるため、関西馬がもぐりこむ余地がなくなっている。
「前は北海道でも新潟でも未勝利戦の空きがそこそこあった。新馬戦で頭数が揃わないなんてこともあったくらいだからね。それが今年はこの時期の新馬戦から除外が出てる。関東馬が多くなったよな」(坂路小屋に陣取る某調教師)
本紙に抜粋する形で掲載している「主な2歳ゲート試験合格馬」(毎週木〜土曜掲載)の抜粋前資料から、今年は関東の合格馬が非常に多いのは気がついていた。例えば6月20日を例に取ってみると、栗東の22頭に対し、美浦では37頭が合格。この日だけでなく、今年は2歳戦開幕前からこうした状況が続いていたのだ。関東ブロックの新馬戦で除外が出るのも、未勝利戦に空きが出ないのも当然といえば当然。問題はなぜこうした動きが顕著になってきたか、ということだ。
夏開催が終わると、3歳未勝利戦は「スーパー未勝利」と呼ばれる出走条件の狭い未勝利戦が行われる。ここが盛況ということは、それだけ2歳馬を登録する余地がないということ(キュウ舎が預託する頭数には上限があるため)。一昨年までの中山のスーパー未勝利戦はいずれもフルゲートだったのだが、昨年はわずかながら空きが出ていた。要はこのあたりから美浦の「意識改革」が進んできたのではないか?
「関東では“どこにいたのそんな馬?”というような未勝利馬が突然出てくることがよくある。それだけ馬房のやりくり、3歳未勝利馬の抹消などが進んでいないということ。未勝利馬といっても、それぞれにオーナーがいるし、大事なのもわかる。でも割り切るところを割り切らなくては自分の首を絞めるだけ。悪循環が続いているように見えるし、美浦も一度リセットしないと」
以前、栗東の某トレーナーが語っていた「リセット」。昨年からの美浦での一連の動きは、まさにこれなのではないか?
今年は皐月賞、オークスを関東馬が制した。来年は日本ダービーも…。長らく続いた西高東低の勢力図に変化が起きているのは確かだ。
先取った話ばかりでなく、今週の話題も。土曜(16日)小倉では2歳オープンのフェニックス賞(芝1200メートル)が行われる。主力となるのは阪神デビュー組か。その中でもノーブルルージュ(牝・宮本)は「もう完成しきっているので、今のうちに稼げるだけ稼がないとね」と宮本調教師は全力投球の構えを見せる。もっとも当コラムがより注目しているのはノーブルルージュの1週前追い切りのパートナーを務めたデスティーノトップ(牡=父Corinthian、母ランフォーイット)という大型馬だ。
「ノーブルルージュは動くからね。さすがにスッと離されてしまったけど、最初に坂路でやった時からこっちもけっこう動いた。小倉4週目(24日)の芝1800メートルあたりを考えているけど、それまでにまだまだ良くなりそう」と宮本調教師が素材を評価しているのはもちろん、注目はその名付け親で「馬主の名古屋友豊さんの計らいで、名古屋グランパスの田中マルクス闘莉王選手に付けてもらったんだ」。
“闘将”ばりの馬格に、気迫も注入されれば…その名の通り、トップでゴールする活躍を何度となく見せてくれるかもしれない。