世間が「安藤勝己」に沸くなかで
エイシンプレストンは、自分にとってとても思い出深い1頭だ。たとえば取材で、「一番印象に残っている馬は?」と問われたら、間違いなく最初に名前が挙がる1頭だろう。その前にキングヘイローもいたけれど、なにしろプレストンには最初から最後まで乗せてもらったし、香港にも連れて行ってもらって、海外初勝利を挙げることができた馬だから。
99年11月6日の京都芝1600mでデビュー。初戦は安藤さんが騎乗していたダイタクリーヴァにちぎれられて2着に負けたけれど、その時点で「この馬は絶対に走る」と思った。だから、2戦目から翌年のニュージーランドTまでは、調教での騎乗もほとんど自分に任せてもらった。「走る」という確信があったからこそ、自分色に染めたかったのだ。
折り返しの新馬戦を5馬身差で圧勝し、中2週で朝日杯3歳Sに挑戦することになった。とはいえ1勝馬の身。出走するためには抽選を突破しなければならなかった。その年の朝日杯には、プレストンともう1頭、エイシンの馬はコジーンが出走していたが(15着)、登録の段階ではもう1頭いて、その馬が出走をあきらめてくれれば、抽選にならずに出走できる状況だった。絶対に勝てる──自分はそう思っていた。北橋先生も同じ気持ちであり、馬主さんにも伝わったのだろう。結局、その馬は出走を取り止め、プレストンは抽選なしで出走できることとなった。
たかが4年目の自分が、なぜそれほどまでに自信を持てたのかはわからない。しかも、当日は4番人気。1番人気は安藤さん騎乗のレジェンドハンター(笠松)で、世間は「安藤勝己、ついに中央GI初制覇なるか」で盛り上がっていた。
レースは、好位追走から馬場の真ん中をいち早く抜け出したレジェンドハンターを、内からプレストンが交わしたところがゴール。自信を持って臨んだ一戦だったから、