(第1回のつづき)
▲「馬の見方については、我ながらかなり勉強したと思います」
──伸びしろ、つまり成長力に賭けるということですね?
国本 そうですね。最初から形も歩様もいい馬は、それ以上成長がない場合が多いんですよ。どこかに余裕や伸びしろを見つけられる馬じゃないと、先々走ってこないと僕は思っているんです。もちろん、間違うこともありますよ。そのまま変わってこない馬もたくさんいる。でもね、雰囲気のある馬っておもしろいもので、どこか寂しく映るんですよね。つまり、僕が目を付ける馬は、その時点ではどこか足りない馬。ショウナンマイティもそうでしたよ。
──そうなんですか!?
国本 はい。あの馬はセレクションセールで買ったんですが、周りの人は「あの馬は“甘い”からダメだ。絶対に走らない」と。でも、さっきも言ったように、「甘い」のと「緩い」のでは違うんですよ。確かにマイティは、「甘い」と言われても仕方がない歩様だったんですが、そこは見方ひとつですよね。僕は「緩い」と思ったし、絶対に走ると思った。マイティを一緒に見た人に、「会長、この馬だけは買うのやめなよ。せめてもう一度、見に行って」と言われて、5回くらい見に行きましたからね。
──確か1200万くらいで落札されたんですよね?
国本 そう。1000万からセリが始まって、僕が「1200万!」って言ったら誰も競ってこなかった(笑)。ある意味、賭けですよ。ダメならダメで、これもひとつの勉強代だって思ってね。でも、いざ育成が始まったら、馬がものすごく変わったんです。その時点で手応えを持ちました。新馬戦、萩Sと連勝したころには馬がだいぶしっかりしてきて、改めて、「この馬、走るな」って思いましたね。今年の青葉賞を勝ったショウナンラグーンもそう。セリの段階では、大した馬じゃないと思われていた馬です。
──落札価格は2520万円。確かに高額馬ではないですよね。
国本 何人か競ってはきたけど、それでも2000万円代ですからね。やっぱりね、そこなんですよ。その時点では、どこか足りない馬なんです。実際、新馬戦なんて12頭立てで8番人気の7着。だらしのない馬だなって思った人もいたでしょうが、まだ太かったし、馬自体、全然出来上がっていなかった。だから、僕から言わせれば、「初戦はまぁこんなもんだろう」と。そこで大久保先生に、「夏は全休させて」と言ったんです。実際、12月の半ばまで、4か月以上休ませましたね。