例年以上に好メンバーが揃った今年の札幌2歳S(辻三蔵)
◆今年の札幌2歳Sは能力だけではなく、調整方法を含めた総合力が問われる戦い
「ダービーからダービーへ」を合言葉に、12年から2歳新馬戦の時期が早まり、今年は日本ダービーが終わった翌週の3回東京、阪神開催から始まっている。昨年の札幌2歳Sは阪神で新馬勝ちしたレッドリヴェール(13年阪神ジュベナイルF1着)が優勝。日本で2番目に直線距離が長い東京、直線に急坂がある阪神、中京の2歳戦は翌年のクラシックを見据えた素質馬が使う傾向にあり、ハイレベルな新馬戦を勝ち抜いた馬が狙い目になる。
また、2着マイネグレヴィル、3着ハイアーレートは福島芝1800mで新馬戦を勝っている。少頭数の戦いになりやすい北海道組と違い、両馬共にフルゲート16頭の激戦を制しており、多頭数で戦った経験が本番に生きている。
今年の札幌2歳Sには東京で新馬勝ちを飾ったブライトエンブレム、福島デビュー組のミュゼエイリアン、フォワードカフェ、新潟芝1800mの新馬戦を圧勝したミッキーユニバースなど、関東選りすぐりの素質馬が参戦している。
その内、短期放牧明けのミュゼエイリアン、フォワードカフェは美浦トレセンで1週前追い切りを済ませてから先週末に札幌競馬場に移動している。
今年はトレセン代わりに使用されていた函館競馬場が例年より1週間早い8月21日(木)に閉鎖になった。クッション性に優れた函館ウッドコースが使えなくなったので、札幌競馬場に入厩している馬は芝、ダートコースで調整するしかない。普段、ウッドコースを使用しているトレセン調教馬にとって慣れないコースでの追い切りは負担がかかる。その点、調教施設が整っている美浦トレセンで9割方仕上げているミュゼエイリアン、フォワードカフェの方が体調管理がしやすいメリットはある。
また、函館競馬場に滞在していたブライトエンブレムは8月20日にウッドコースで追い切りを終えた後、調教施設が充実しているノーザンファーム早来に1週間ほど放牧。27日に札幌競馬場に移動して、28日にスクーリングを兼ねて芝コースで軽めのキャンターを行っている。こちらもウッドコースを使えないデメリットを最小限に抑えるために、近隣の牧場を有効活用している。中2週で強めの調教が必要ないミッキーユニバースを含めて、関東からの遠征組は調整過程にアドバンテージがある。
札幌競馬場で最終追い切りを行う札幌2歳Sは調教場所にも注目したい。08年以降(函館に代替開催になった13年除く)、ダートコース調教馬が5勝2着3回の好成績を収めている。全体時計は遅くても、外目(7〜9分目)を回って負荷をかけていれば問題ない。
例年以上に好メンバーが揃った今年の札幌2歳Sは能力だけではなく、調整方法を含めた総合力が問われる戦いになる。