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凱旋門賞同様に上位人気は3歳世代の精鋭が並ぶBCクラシック展望

  • 2014年10月22日(水) 12時00分


戦前は古馬勢が手薄と言われていた凱旋門賞では古馬同士の1、2着だったが…

 アメリカ競馬の祭典ブリーダーズC(10月31日・11月1日、サンタアニタ)は、今週月曜日の20日にプレ登録が締め切られ、水曜日(22日)に登録馬の発表が行なわれる運びとなっている。

 ほぼ全ての前哨戦を終え、メイン競走となるG1BCクラシック(d10F)は現在、上位人気にズラリと3歳世代の精鋭が並ぶという、近年あまり見たことのない勢力分布が出来上がりつつある。

 デイリーレイシングフォーム(DRF)のオッズ(10月20日現在)で3.5倍の1番人気に推されているのが、シェアドビリーフ(セン3、父キャンディライド)である。

 御存知のように昨年の全米2歳チャンピオンで、今季のスタート時点ではケンタッキーダービーの最有力候補と見られていた馬である。

 ところが、年明け早々に発症した右前脚裂蹄の回復に手間取り、春の3冠を全休。米国の競馬ファンを落胆させたが、5月末にようやく戦線に復帰すると、能力の高さをいかんなく発揮しての快進撃を再スタートさせることになった。約半年ぶりの出走となったゴールデンゲートの一般戦(AW6F)を4.1/4馬身差で快勝すると、デビュー5戦目にして初めてのダート戦となったG2ロスアラミトスダービー(d9F)も4.1/4馬身差で楽勝。更に、初めて古馬と顔を合わせたのに加え、10Fの距離も初めてだったG1パシフィッククラシック(AW10F)も2.3/4馬身差で制覇。そして前走G1オウサムアゲインS(d9F)では、2番人気に推されたフェドビズ陣営がシェアドビリーフのマーカーとして出走させたスカイキングダムが、シェアドビリーフに終始大外を廻らせるという、レース翌日にスカイキングダムのV・エスピノーザが7日間の騎乗停止処分を課せられた“反則まがい”の妨害を受けた中、フェドビズに首差競り勝って優勝。すなわち、レースごとに立ち憚った障壁を次々と克服し、デビューから無敗のままBCクラシックを迎えるのがシェアドビリーフなのである。

 前哨戦で必要以上にタフな競馬をしてしまったことが心配されたが、14日には本拠地ゴールデンゲートで前走後初めてとなる追い切りを消化して5F=60秒6をマーク。すこぶる元気なことをアピールしている。

 ここも他馬のマークが厳しくなること必至だが、無事に白星で通過し、無敗の連勝記録がいったいどこまで伸びるかという夢を見続けさせて欲しいと、多くのファンが願っている。

 DRFのオッズで5.5倍の2番人気に推されているのが、バイエルン(牡3、父オフリーワイルド)だ。

 西海岸の大御所ボブ・バファート師の管理下にあって、早くから素質の高さを期待される存在だったが、仕上がりが遅れてケンタッキーダービーには間に合わなかった同馬。出走に漕ぎ着けたG1プリークネスS(d9.5F)では勝ち馬から21馬身遅れの9着に敗れ、春は期待に応えることが出来ずに終わった。

 だが、7月にモンマスパークのG1ハスケル招待(d9F)で後続に7.1/4馬身差をつけて待望のG1初制覇を達成。更に圧巻だったのが前走、9月20日にパークスレーシングで行われたG2ペンシルヴェニアダービー(d9F)で、実はこのレース、戦前は春の2冠馬カリフォルニアクローム(牡3)の秋初戦としておおいに話題となっていたのだが、ここでバイエルンはトラックレコードを樹立し5.3/4馬身差の圧勝。カリフォルニアクロームから主役の座を奪う形となった。

 ことほどさように、天性のスピードを活かしてダッシュよくハナを切り、自分の競馬が出来た時には後続に大きな差をつける圧倒的なパフォーマンスをする馬だ。だがその一方で、前出のプリークネスSしかり、更に8月にサラトガのG1トラヴァーズSに出走した時にも、勝ち馬から20馬身差の10着に敗退と、負ける時には無抵抗にあっけなく大敗する馬でもある。

 DRFのオッズで6倍の3番人気が、バイエルンの項目で名前の出たカリフォルニアクローム(牡3、父ラッキープルピット)だ。

 2歳秋までは西海岸における“その他大勢”の1頭に過ぎなかった同馬が、2歳暮れにハリウッドパークのカリフォルニア産馬限定特別を圧勝したことをきっかけに一変。歩み始めた連勝街道は、G1ケンタッキーダービーを無事白星で通過し、G1プリークネスSも楽々とクリアして、G1ベルモントSで36年振りの3冠に挑む局面を迎えるにいたった。だが、6連勝で臨んだG1ベルモントSは勝ち馬に1.3/4馬身及ばぬ4着に終わって3冠奪取に失敗。そして、夏の休養をはさんで“出直し”となった9月20日のG2ペンシルヴェニアダービーでも、勝ち馬バイエルンから7馬身以上遅れた6着に敗れている。

 元来が使われながら良くなるタイプだけに、前走の大敗はそれほど気にしなくても良いという見方がある一方、春に蓄積された疲労が完全に抜けていない可能性もあるとして、復活には時間がかかるという声も挙がっている。

 DRFのオッズで7倍の4番人気が、東海岸を拠点とするトナリスト(牡3、父タピット)だ。

 2歳11月のデビューからゆったりとしたローテーションで使われ、3歳5月にデビュー4戦目にしてG2ピーターパンS(d9F)で初重賞を獲得。ここは勝負と、自身初めてとなる中3週の臨戦態勢でG1ベルモントS(d12F)に挑み、頭差の辛勝ながら先頭でゴールを駆け抜け、クラシックホースの称号を手にしている。

 その後は東海岸における3歳馬の王道を歩み、G2ジムダンディS(d9F)2着、G1トラヴァーズS(d10F)3着と惜しい競馬を続けた後、古馬との初対決となった9月27日のG1ジョッキークラブゴールドC(d10F)を見事に制して2度目のG1制覇を果した。

 ベルモントパークにおける戦績が3戦3勝であるのに対し、それ以外の競馬場では5戦1勝で、そんなところからブリーダーズCでは、初めてとなる西海岸への遠征や、初コースとなるサンタアニタへの対応を、不安視する声も挙がっている。

 DRFのオッズでは、ここまでの4頭がオッズ10倍以下。すなわち、上位人気を3歳世代が占める情勢となっている。

 オッズ11倍の5番人気にようやく顔を出しているのが、オッズの上では古馬勢を代表する形となっているジーヴォ(牡5、父トゥルーダイレクション)だ。

 4歳の秋から本格化した“レイトブルーマー”で、今年に入るとニューヨ−ク産馬限定の特別や条件戦を4連勝。勢いに乗って挑んだ7月のG2サバーバンH(d10F)で、重賞初挑戦初制覇を果している。

 その後は、G1ホイットニーS(d9F)4着、G1ジョッキーゴールドC(d10F)2着と、G1でも通用するところを見せている。もっとも、現段階でG1は未勝利で、この成績の馬が古馬勢の筆頭に掲げられている辺りに、今季の古馬ダート中距離戦線の“手薄感”が色濃く滲み出ている。

 とは言え、だ。欧州2400m戦線の総決算G1凱旋門賞(芝2400m)も戦前は、3歳にタレントが多く、一方で古馬勢が手薄と言われていたが、蓋をあけてみれば古馬同士の1、2着に終わっている。

 果して、シェアドビリーフが連勝を継続してスーパーホースと呼ばれることになるのか。あるいは、米国の総決算でも古馬勢が意地を見せるのか。11月1日を楽しみに待ちたいと思う。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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