ハープに続くエース候補、フローレスダンサー/吉田竜作マル秘週報
◆フローレスダンサーに松田博調教師は「こいつがどんなレースをしてくれるか、ホント楽しみなんだ」
GIIIアルテミスS(11月1日=東京芝1600メートル)の西の注目馬といえばシングウィズジョイ。前走の野路菊Sでは牡馬クラシック候補と誉れ高いダノンメジャー相手に真っ向勝負を展開し、半馬身差2着に食らいついた。牝馬限定戦なら、好勝負は約束されたようなものだろう。
ところが、そんな猛女のいる相手関係をまったく意に介していないのが松田博調教師だ。いわく「こいつがどんなレースをしてくれるか、ホント楽しみなんだ」。札幌の新馬勝ち以来となるフローレスダンサーに並々ならぬ期待を寄せている。
新馬勝ち直後はGIII札幌2歳Sへの参戦プランも浮上したが、僚馬アドマイヤガストの出走が決まっていたうえに、フローレスダンサーと同じ社台ファームの生産馬が複数いたことも影響したのだろう。放牧に出され、早くからこのレースに照準を絞ってきた。初めて栗東にやってきた姿を見て、「札幌の時に比べればだいぶ見られる体つきになってきたな」とトレーナーが目を細めていたのは実に印象的だった。
一方で初めてフローレスダンサーをナマで見た記者が意外に感じたのはその性格。「おとなしい」とは聞いていたものの、母ダンスインザムード、半姉ダンスファンタジアはその激しい気性がネックとなっていただけに、うのみにはできなかったのだが…。
馬上にあった担当の野見山助手に「おとなしくて品のある顔をしているね」と声をかけると、わざわざ顔の両サイドを見せてくれたうえで「片方から見るとかわいいんですが、反対の目がちょっと白目がちで。きつい感じにも見えるんですよね」と説明してくれた。
何げないシーンにも思えるだろうが、テンションが上がりやすい馬では、鞍上の指示通り動いて顔の両サイドをおとなしく見せてくれる芸当などできっこない。
このおっとりした気性のせいか、それともブランクの影響なのか。2週前追い切りでは「動かないな」と松田博師は首をかしげていたが、このひと追いで“使命”を思い出したのだろう。翌週の古馬との併せ馬では動きが一変。一杯に追う相手に対して、楽々と先着してみせた。
「ハービンジャーの子が中央場所でどんなレースをするのか。まだ結果が出ていないからなあ」とトレーナー。活字にすると不安げな印象を与えるが、その表情には自信がにじみ出ている。ハープスターに続く「牝馬のエース」はこのフローレスダンサーで間違いあるまい。
その松田博厩舎には2歳馬が続々と入厩中。オークス馬スマイルトゥモローを母に持つトゥモローワールド(牡=父ディープインパクト)、レッドアルティスタ(牡=父ステイゴールド、母スタイルリスティック)は24日にゲート試験も突破した。「トゥモローワールドは当歳の時に大ケガをしてどうなることかと心配したけど、今見るとどうもないもんな。何か持っているのかもしれん。レッドアルティスタはウチにいたステイゴールドの産駒と比べるとちょっとうるさい。ただ、よそと比べればずっとおとなしいんだろうな。体のつくりはしっかりしている」と両馬ともに高い評価を与えている。
さらにはレーヴミストラル(牡=父キングカメハメハ、母レーヴドスカー)、トウシンハンター(牝=父エンパイアメーカー、母トレンドハンター)も新たに軍団入り。名伯楽の最後のクラシックに向けて、いよいよ“駒”が揃ってきたことを実感させられる。