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大野拓弥騎手(3)『現役最多の単勝万馬券!大野騎手の勝負師魂』

  • 2014年11月17日(月) 12時00分
おじゃ馬します!

▲大野騎手が勝負師としての信念と、“穴男”誕生のきっかけを語ります!


江田照男騎手や丸田恭介騎手など、穴党ファンに人気のジョッキーたち。その中でも大野騎手は、単勝万馬券回数が現役最多(11月10日現在)というすごい記録を持っているんです。「2着3着は要らない。勝つか負けるか」、そう語る大野騎手。今週は勝負師としての信念と、そこに至った切ないきっかけをお届けします。(Part2のつづき、取材:赤見千尋)

「一発やってやろう」というのはありますね


赤見 スプリンターズSのスノードラゴンは13番人気。単勝オッズ46.5倍。またまた“穴男”っぷりを発揮しましたね。さらにすごいことに、大野騎手は過去に単勝万馬券を出したことがこんなにも! 現役騎手のなかで最多だそうです。

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大野 本当ですか!? 単勝万馬券が多いというのは教えてもらったことがあるんですが、こんなにとは知らなかったです。

赤見 単勝万馬券なんて夢の馬券ですよ! 自分自身ではあんまり「俺は穴男だ!」みたいなのはないですか? 江田騎手とか丸田騎手は、そういう雰囲気も持っているじゃないですか。

大野 僕はそういうのはないでけど、まぁ、丸田と同じところには並びたくないですね(笑)。

赤見 ひどい先輩(笑)。それにしても、単勝300倍台が2回もですよ。これだけ人気薄で勝つと、ウイナーズサークルに行って、ファンの方の反応も大きいんじゃないですか?

大野 いやいや、普通ですよ。たまに「ありがとう」って言っていただきますけどね。僕が言うのも変ですけど、そんなに人気がない馬だと、それまでの成績も良くないわけじゃないですか。「これでよく馬券取れるな」って思いますよね。

赤見 思います。よく「ここが走りどきだ」って見抜けますよね。

大野 本当に。すごいと思います。もしかして、馬を見て買ってないんですかね? ラッキーナンバーとか好きな色とかで選んでるのかなって。

赤見 それか、大野騎手だから買ってる方も多いと思いますよ。「何かやってくれそう」っていうイメージですもん。やっぱり、穴党のおじさんとかから人気なんじゃないですか? どうですか、黄色い声援も聞こえますか?

大野 ん〜、黄色い声はあんまりないかもしれない(苦笑)。

赤見 ちょっと野太めの感じの声の方が(笑)。でも、1回でも単勝万馬券を取らせてもらったら、その興奮と感謝は忘れられないと思います。その後も大野騎手を追いかけたくなると思いますもん。私、単勝万馬券を取るのが夢なんですけど、まだ取ったことないです。最高が8000円。

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▲「単勝万馬券を取るのが夢なんですけど、まだ最高が8000円で…」


大野 すごいじゃないですか、8000円取れれば!

赤見 いやいやいや、1万円取りたいんですよ。でもやっぱり、なかなか狙っては取れないんですよね。1、2、3番人気ぐらいを抜いて、総流しとかにしないと。これから私も大野騎手を狙っていこうかな(笑)。やっぱり「一発やってやろう」っていう、勝負師魂みたいなのが常にあるんですか?

大野 「一発やってやろう」というのはありますね。勝つか負けるか、2着3着は要らないかなっていう。勝ちにこだわるレースをしようと思っています。

赤見 かっこいい! これぞ勝負師! 着狙いというかそういう上手な競馬と、一発やってやろうという競馬だと、乗り方は変わってきますか?

大野 変わりますね。「馬に競馬を教えてほしい」とか、そういう指示があったら合わせますけど、そうでなければ、基本的には一発あるような乗り方をしたいです。

赤見 自分自身ではどんな時にハマりますか?

大野 どうなんでしょう? この競馬場がとかこのコースがというのは、あんまりないような気がします。自分の中で「行けるかな」って思えるのは、返し馬での感触ですかね。パドックでというよりは、乗って、返し馬の感触でつかめるかなと。レース前の組み立てというのは、新聞とかいろいろ見ながら、大体の展開の感じを予想するんですけど。その上で、馬の状態とかを見極めてですね。レース前はそういうことをしてます。

赤見 大野騎手の騎乗を思い浮かべると、先行で勝ってる時もあるし、差して来て勝ってる時もあるので、固定でこのパターンならっていうわけではない気がするんですけど、その辺りはどうですか?

大野 そうだと思います。あ、でも、逃げた時は割と調子いいですかね。自分の中ではいいような気がします。あとは、道中をロスなく回るというところを意識してますね。

赤見 勝つ競馬をより意識するようになったのは、いつ頃からなんですか? デビューした頃からですか?

大野 最初の頃は、人気のない馬で着を拾おうとしたり、どうやって乗ればいいんだろうって考えたり、そういうところから始まったんですけど。最近はやっぱり、1着じゃないと残らないっていうのを感じますので。そのきっかけになったのは、2年目に乗せてもらったマイネルーチェという馬なんですけど。その馬は……、ええと、牝馬で、

赤見 牝馬なのは分かります、マイネだから。

大野 たしかに(笑)。小柄な牝馬で、そんなに目立っていい動きをする馬じゃなかったんですけど、新潟2歳Sで2着にきたんです。僕自身、初めて重賞で馬券に絡んでうれしかったんですけど、まったく同じ日に、同期の鮫島(良太)がアストンマーチャンで小倉2歳Sを勝ったんです。次の日にスポーツ新聞を見たら、扱いが全然違って…。

赤見 やっぱり重賞1着と2着とではだいぶ違う。

大野 違いますね。向こうは新聞にボンっと載って、僕は全然。コメントもなかったんじゃないかな。それを見て「あぁ、やっぱり2着ではだめなんだ。勝たないといけないんだな」っていうのがわかりました。マイネルーチェは次の年のオークスで、初めてGIも行かせてもらって。いろいろ経験させてもらった、思い出の一頭です。

赤見 いい成績を残せれば、その後も続けて乗せてもらえますし。それが1着なら、なおさらですよね。

大野 そうですね。今は騎乗馬を確保するのも大変な時代ですし。特に最近は、中央場所で乗せてもらっていて、トップジョッキーが集まっている中で乗っているので、いつ乗り替わるか分からない状態なので。だからやっぱり、常に「勝ち」にはこだわっていますね。(つづく)

東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

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