「まさかの高馬」は走る? 走らない? (須田鷹雄)
◆カッコいい感じが出てお得感がある「種牡馬のわりにセリで高かった馬」
以前から調べてみようと思っていたことがひとつある。それは、「種牡馬のわりにセリで高かった馬の成績」だ。
セリ価格の形成には母系の価値も影響するが、いちばん作用するのは種牡馬である。そして、商品価値の高い種牡馬を付けている率は大手牧場ほど高いから、種牡馬基準のデータはある程度生産者の価値も含むことになる。
いまだとディープインパクト産駒は文句なしに高く、牡馬でノーザンファーム産などということになったら父と同じ7000万円で買えるかどうか。日高産でも5000万円クラスの話になってくる。
一方で、「この種牡馬のわりに高かったな」というケースも実際のセリでは発生する。母系に価値のあるケースもあるが、デキのいい仔馬だったという可能性もある。この、「あの種牡馬にしては高いね」というケースは走っているのか? という話だ。
2歳以上のセール価格税込み5000万円以上産駒(かつ中央に登録された馬のみ)が3頭以下だけ存在する内国産種牡馬(現在も産駒がいる種牡馬のみ)は29頭。ちなみに該当馬が1頭だけいたというのはゴールドアリュール、バブルガムフェローなど16頭。うち1頭はまだその産駒が2歳未出走のエンパイアメーカーである。
この29種牡馬の5000万円以上産駒、合計46頭のうち、中央出走歴があるのは43頭。その成績(POG期間内ではなく生涯成績)はどうなっているだろうか。右のカッコ内に「5000万円以上で取引された全馬」を対象にした成績を比較対象として添えてみる。
出走43頭 勝ち上がり29頭 (出走503頭 勝ち上がり346頭)
勝ち上がり率67.4% (68.8%)
1頭あたり賞金5558万円 5294万円
1走あたり賞金394万円 367万円
勝ち上がり率はやや低いが、賞金系の指標は上回った。しかも、億レベルの産駒がいる・いないということを考えると、平均価格は「しょっちゅう高馬が出る種牡馬>高馬が珍しい種牡馬」。そう考えると「まさかの高馬」のほうが明らかに優秀と言えるだろう。
この結果は本物のオーナーにとってはあまり価値がない(実際に買おうと思ったらさらに競り上げなければならない)が、外ウマに乗るだけのPOGプレイヤーにとっては意味がある。「高馬だけど、あの種牡馬だしな〜」というケースはむしろ良いということだ。
ちなみにホワイトマズル産駒唯一のセール5000万円以上馬がアサクサキングス、アドマイヤムーン産駒唯一の5000万円以上馬がハクサンムーンである。こういう馬で当てると(ハクサンムーンはPOG期間はさして走っていないが)、手がかりがあるわりにカッコいい感じが出てお得感がある。ドラフトでの人気も、「高馬が珍しい種牡馬」産駒のほうが低いはずだ。