ダノンプラチナの朝日杯FS勝利に思う
出来るか出来ないかわからぬ時は、出来ると思って努力せよと言う。こう言われていた頃が懐かしい。それがどう変化してきたかだが、まず、見方を変えてみることを覚えた。ひとつことに執着しすぎて無理を重ねていることに気づき、これでは埒(らち)が明かないと思うようになっていた。これが悪ければ別の方法があるではないかと。自分では進歩したと満足もしたのだが、どうも腰が座っていない。ただひたすらという清い心が見えてこないではないか。出来ると思って頑張っていた方が、なにか満たされるように思えてならない。出来るか出来ないかにとらわれず、とにかくやり続けていこう。こう自分を解放することで、大分楽になった。そこで得た心境がこうだ。「思い込みも大切、思い込みを目的とおきかえるとわかりやすい」と。
正に、これから頂点をめざそうとする2歳馬たちの中に、こうした戦い方をしているものがいるではないか。朝日杯FSを勝ったダノンプラチナ、このディープインパクト産駒の勝ち方にそのことを見い出せた。一週前に同じディープ産駒のショウナンアデラで阪神ジュベナイルFを勝っていた蛯名正騎手は、先週と同じ気持で乗りましたと、全てを最後の末脚に託していた。あの素晴らしいフットワークを乱さないように、ただそれだけを念頭に戦い、馬もその思いにきちんと応えてくれた。
ただひたすら直線、どう抜け出すかだけを見据え、そして、狙いどおりの走りで勝利した人馬から、「思い込みも大切、思い込みを目的とおきかえる」姿を見て取れたのだった。気持が舞い上がるところがあるのでとパートナーを分析していたが、その心の内は、きっと落ち着きも出てくると確信できていると思う。この思い込みも、ダノンプラチナを大成させる力になっていく筈だ。かつて、有馬記念の大舞台でディープインパクトに一矢を報いたハーツクライの勝因は、ルメール騎手の相手よりも前の位置取りでという「思い込みを目的」におきかえたところにあった。