シルクフォーチュン“らしさ”見せたラストラン/トレセン発秘話
◆ファンの多かった追い込み馬
先週のフェブラリーSでスタンドが一番どよめいたシーンといえば、スタートで逃げるはずだったコーリンベリーが出遅れた時? いやいや、シルクフォーチュンが4角をものすごい手応えで上がってきた場面だったのではないか。昨夏以降は精彩を欠くレースが多かっただけに、坂路野郎もあの手応えには正直、ド肝を抜かれた。
「勝負どころで外から上がってきた時にスタンドから大きな歓声が上がった。見せ場はつくれたんじゃないかな」と振り返るのは藤沢則調教師だ。
一部では「早めに動き過ぎた」という意見もあり、鞍上の江田照自身もレース後に「次はもっとうまく乗れると思う」と話していたそうだが、実はフェブラリーSが引退レースと戦前から決まっていたため、藤沢則師は苦笑するしかなかったとか(26日付で競走馬登録を抹消し、ノーザンホースパークで乗馬に)。
それでも「オーナーサイドも『見せ場をつくれたし、いい競馬だったんじゃないですか』と言ってくれた。あの馬が最後の最後で久々にらしさを見せてくれたわけだし、いいレースだったと思うよ」と藤沢則師。
最後方から芝並みの上がりで豪快に追い込むレーススタイルでファンが多かった。
「突然見えないところから追い込んでくるから実況の人が馬名を間違えることもあったし、馬券を買う人からすれば毎回ヒヤヒヤしていたと思う。JRAの人からも『この馬はファンが多いんですよ』とよく言われたんだ」(藤沢則師)
個性派と言われる馬が少なくなった現在、この手の豪快さが売りの馬がいなくなるのは寂しい限りだが、トレーナーが言うように最後の最後で“らしさ”を少しでも見せられたのだから、いいラストランだったのかもしれない。
(栗東の坂路野郎・高岡功)