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ルージュバックに対抗するのはこのレースから

  • 2015年03月06日(金) 18時00分


ハービンジャー産駒は難しい

 1995年以降、過去20年間の「桜花賞の1-3着馬」を、直前のステップレース別に整理してみると、

(桜花賞1着/2着/3着)
▽チューリップ賞組…11頭/7頭/6頭
▽Fレビュー組…3頭/3頭/3頭
▽アネモネS…3頭/0頭/4頭
▽フラワーC組…2頭/2頭/2頭
▽クイーンC組…0頭/4頭/4頭
▽その他のグループ…1頭/4頭/1頭

 という数字になる。20年間の馬券に関係した60頭のうち、ちょうど40パーセントに相当する「24頭」が、直前はチューリップ賞である。なおかつ、勝ち馬の半数以上の「11頭」が最終ステップにここを選んでいる。

 本番と同じ阪神1600mで行われるチューリップ賞は、1980年代から組まれていたが(最初は中3週)、しだいに評価が高くなり重賞に昇格した経緯がある。同じコースというのも重要だが、本番の桜花賞とのレース間隔が中4週間(1ヶ月)になるのが、多くの3歳牝馬にとって理想に近いローテーションなのだろう。

 衆目一致の今年の候補No.1ルージュバックは、2月8日の「きさらぎ賞」から直行の予定。これはだいたい近年のクイーンC組と同じようなレース間隔になる。昨年2着のレッドリヴェールなど、12月の阪神JFから4ヶ月の休み明けだったくらいだから、予定通りである以上まったく心配ないが、強力なルージュバックに対抗するのは、理想のステップを歩む今週のチューリップ賞組と考えることはできる。

 ロカ(父ハービンジャー)は、前回のクイーンC3着で、桜花賞挑戦は断念するのではないかとも思えたが、少々きついローテーションになるのを承知で、M.デムーロ騎手にチェンジしてここに出走してきた。

 前回の敗因は、出負けは阪神JFと同じで仕方のないロスだったが、3コーナーあたりから動いたためにゴール寸前に鈍った印象もあったからの鞍上チェンジか。

 ハービンジャー産駒は難しい。たとえばロカは新馬戦で「11秒8-11秒0-11秒0」=33秒8の高速上がりの決着を、上がり33秒2で強烈に抜け出したが、「切れ味に勝る」というのではなかったように思える。あのスローなら33秒2は決して珍しくもない。スケールと総合スピードで上回ったからの連続2ハロン「10秒台」である。

 ここまで多くの産駒が出走したが、みんな母の父にサンデーサイレンス(系)の血は入っていても、ディープインパクト産駒のような鋭い切れは秘めていないことが判明しつつある。

 あくまでハービンジャー(父ダンジリ。その父デインヒル)であり、完全にヨーロッパタイプである(母の父はベーリング)。ハービンジャー自身は、3歳の4月にデビューしたが、スタウト調教師は3歳時には無理することなく成長をうながし【2-1-1-1】、4歳になって独走のキングジョージなど【4-0-0-0】の完成に結びつけたともいわれる。とすると、伝える特質は、レースへの対応力に優れ、春になるとたちまち全能力を発揮するような欧州のクラシック血統ではない危険もある。

 ロカの母ランズエッジ(父ダンスインザダーク)はディープインパクトの4分の3同血の妹であり、ロカは男馬ではないから、ハービンジャー産駒の中では完成されるのが早いとみて、春の路線(桜花賞以上にオークス)でも期待することにするが、デムーロ騎手で権利確保の3着以内は可能だろうか。3戦して体の線はシャープになった。

 本番に向けて、必ずしも必死で勝ちには出ないとしても、獲得賞金から本番OKの「クルミナルココロノアイコンテッサトゥーレレッツゴードンキ」は軽視する力関係ではない。注目のブチコ(父キングカメハメハ)は、古馬準オープン級の時計で快勝した前回の内容から、たとえダートの方により高い適性を持つとしても、好勝負と思える。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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