フレイムコード藤懸が大駆けに色気十分/トレセン発秘話
◆「馬に対する思い入れなら誰にも負けないですよ」
調教役の多くは、どの馬よりも早く、真っ先に馬場に出ようとする。追い日の開門(現在は午前7時)直前の坂路は、馬道下り口の狭いスペースに、開場を待ち構えた馬が密集して危険に思えるほど。誰もが考えるのは「できるだけいい馬場で追い切りを行いたい」。
一方で、馬場が悪いであろう一番遅い時間にあえて調教を行うケースもまれにある。典型例はGIII中山牝馬S(15日=芝内1800メートル)に出走するフレイムコードだ。遅い時間に出てくる“常連”で、閉場時間(現在は午前11時)をわずかに過ぎてウッドに現れた時はJRAから注意を受けたこともあったという。
「馬が多いと気にしてしまって調教がしづらいし、乗ってくれている藤懸が忙しいのもあって、いつも一番最後の時間に調教してもらっているんだ」とは担当の木埜山キュウ務員。
稽古をつける藤懸は競馬開催日の土日以外はほぼ毎日、つきっきりでこの馬のために遅い時間まで残り、角馬場で40分ほど入念に体をほぐしてからウッドに入る丁寧な調整を施している。
「競馬に乗らない時は土日にもまたがってくれる。本当によくやってくれているよ」(木埜山キュウ務員)
だからなのだろう。メンバーを見渡した藤懸は、他にもっと長くコンビを組んできた人馬もいる中で「馬に対する思い入れなら誰にも負けないですよ」と言い切る。もちろん「今週は角馬場で落ち着いてくれていたのが何より。状態はいいですし、ハンデ50キロなら追ってからの反応も違いますから」と色気十分だ。
有力馬ケイアイエレガントが捻挫で出走回避。もとから軽いメンバーだったのが、さらに軽いメンバーに。馬場さえ良ければ、フレイムコード&藤懸の息ぴったりコンビが、大仕事をしてくれるのではないかとひそかに期待している。
(栗東の坂路野郎・高岡功)