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今回のメンバーの中では明らかにワンランク上/フィリーズレビュー

  • 2015年03月16日(月) 18時00分


20キロ減ながらも完勝

 みんなが驚いたのは、1番人気のクイーンズリング(父マンハッタンカフェ)の馬体重が、前走の中山の菜の花賞から「20キロ減」の444キロと発表された時だった。

 春の3歳牝馬が前走比いきなり20キロ減と知れば、だれだってびっくりする。もっとも体調変化の大きい季節である。まして、この牝馬はマンハッタンカフェ産駒である。

 父のマンハッタンカフェは、2001年の春、2戦目の新馬を快勝したとき492キロ。ところが、3戦目に皐月賞の出走権をかけて弥生賞のパドックに登場すると、「20キロ減」の472キロだった。3戦目で激減は、数字までそっくり同じだった。父の弥生賞は4着。

 そのあと、(素晴らしい素質を秘めることは分かっているから)クラシック挑戦をあきらめきれないマンハッタンカフェは、4月の阪神に遠征して、力尽きる。今度は「16キロ減」の456キロだった。1月末の新馬初戦デビューが498キロだから、わずか2カ月ちょっとのあいだに「498→456」キロ。42キロ減である。

「このままでは死んでしまう…」とまで心配されたマンハッタンカフェは、立て直しの休養に入った。4月の阪神から4ヶ月後、8月の富良野特別2600m(札幌の500万条件)に再登場した同馬の馬体重は「502キロ」。なんと、プラス46キロである。身体がもどって楽々と連勝したマンハッタンカフェは、秋には菊花賞馬となり、4歳春になると天皇賞・春を勝った。

 パドックの状態をみるまでなんともいえない。阪神のパドックから送られてきたクイーンズリングの映像は、20キロ減が発表されているから、たしかに少し仕上がり過ぎのように映った。しかし、変にイレたり、落ち着きを欠いているわけではない。細くてギリギリという状態でもない。

 みんなに心配されながら、実際のレースは完勝だった。

 レースのあとになって思ったのは、「遠征した関東の中山では460キロ台だったのに、地元の関西で20キロ減はおかしい」と感じるのはその通りだが、中山へ遠征してきたクイーンズリングはその日がレースではない。まして3歳牝馬の遠征競馬だから、余裕のある馬体作りで遠征する。

 中山に着いて、輸送の疲れをとりつつリラックスしたこの牝馬は、実はカイ食いの不安などあまりないのだろう。一夜明けるともう輸送減りした身体はほとんど戻っていた。

 ところが、地元の阪神の1戦とはいえ、今回は当日輸送のレースである。桜花賞出走をかけてこれまでよりキチッと仕上げた(6-8キロ絞った)ところに、当日の輸送減り(阪神への初輸送だから10キロくらい)が重なって「20キロ減」だったのではないか。確かに、これまでより少し細くなった印象はあるが、クイーンズリングの大幅な馬体重減は、父マンハッタンカフェのそれとは理由が異なり、今回の体重減はそれほど心配するにはあたらないのではないか、だった。

 出負け気味のスタートから後方馬群の外につけたクイーンズリング(M.デムーロ騎手)は、まったく慌てることなくそのまま進み、4コーナー手前で気合をつけて間合いを詰めると、直線は1番外へ。内回りの短い直線を真一文字に伸びた。パトロールフィルムで確認すると、少しも内のライバルの方へ寄ることなどなく差し切った。

 勝ち時計は1分22秒5。レース上がり35秒8のところを、1頭だけ34秒9。2着ペルフィカ(父ゼンノロブロイ)との差は4分の3馬身差だが、今回のメンバーの中では明らかにワンランク上であることを示す完勝だった。

 フィリーズレビュー組は、最近20年間では「2008年レジネッタ(FR3着)、2005年ラインクラフト(FR1着)、1997年キョウエイマーチ(4歳牝特1着)」の3頭しか本番の桜花賞を勝っていないことが知られ、11頭の勝ち馬を送るチューリップ賞組に大きく見劣るが、今年は候補No.1のルージュバック(父マンハッタンカフェ)も2月8日の「きさらぎ賞」以来、ちょうど2カ月ぶりの出走となる。2カ月ぶりの出走で桜花賞を制したのは、最近20年間では2011年のマルセリーナ(2月5日のエルフィンS1着)だけである。

 ルージュバックにもローテーションの死角なしとはいえないから、同じマンハッタンカフェ産駒のクイーンズリングにもステップレースうんぬんの不利は少ないだろう。20キロ減がカイ食い不安や、体調の変動によるものではなく、かつ、反動が出ないことが条件にはなるが……。

 父マンハッタンカフェは2001年の菊花賞を制しているが、最近20年、セントライト記念を直前のステップに菊花賞を勝ったのはマンハッタンカフェ1頭である。

 外から一気に伸びたクイーンズリングには負けたが、3コーナーではほぼ同じ位置にいた若い菱田裕二騎手(22)のペルフィカのレース運びは巧みだった。さっと内回りコースのインぴったりにもぐり込み、まったくロスのないレースである。通ったコースを考慮すると勝ち馬との力量差は0秒1にはとどまらないが、上がり35秒0はNo.2である。これでコンビの成績【1-2-0-0】。日本ダービーなどの牡馬クラシックがどちらかといえばベテラン騎手向きというなら、牝馬クラシックは若い騎手向きである。角田調教師を筆頭に、佐々木晶三調教師、音無調教師、熊沢騎手など、桜花賞やオークスを勝って名を挙げた騎手はいくらでもいる。

「前半34秒7-(12秒0)-後半35秒8」のペースを考えると、楽に先行しながら3着にとどまったムーンエクスプレス(父アドマイヤムーン)は、追っての味もう一歩だった物足りなさは残るが、時計やペース以上に差し=追い込み型向きの展開だったともいえる。こちらは若い松山弘平騎手(25)と、7月のデビュー戦からずっとコンビで【2-1-2-2】。今回は12月の阪神JF以来3カ月ぶりだった。小柄でも使って良化型に近い。希望はつながった。

 以下、7着レオパルディナ、11着エフェクト、13着クールホタルビ、15着オーミアリス、17着ウィッシュハピネスの5頭は獲得賞金額から桜花賞出走可能なラインに達しているが、今回の敗戦で大きく後退したとしていいだろう。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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