ダービーへの道は開けるか、アルバートドック/吉田竜作マル秘週報
◆育成方針、調教方法に多様性があるからこそ、POGも競馬も面白い
美浦では名門・藤沢和厩舎にもすでに2歳馬が入厩している(フェアリーバラードの13、リトミックダンスの13)とのことだが、栗東にもようやく2歳馬が入厩。坂口厩舎のロイヤルクルーズ(牝=父ヴィクトワールピサ、母ロイヤルミント)だ。坂口厩舎は今後も続々と2歳馬を入厩させていく予定で、春の訪れとともに栗東も緑のゼッケンが増えていくことになりそう。
ちなみに入厩第1号となったロイヤルクルーズの半兄マルコフジも坂口厩舎からデビューし、準オープンまで出世した。「馬体もあるし、いい馬なんだ。少し気難しそうなところはあるけど、走ってきそうだよ」と坂口師。今年が初年度になる父の産駒は評判が相当いい。早い時期から計算に入れられる馬になるのでは。
預託頭数の上限が厳しくなり、2歳馬の入厩は新馬戦が始まる直前というケースも多くなった昨今。それでも坂口厩舎が早期入厩をさせているのには理由がある。
「ウチは社台とかの大手で育成してくる馬が少ない。ああいうところなら直前にサッとやれば態勢は整うんだろうが、ウチが預けている牧場ではそうはいかないんだ。レースに向けて必要なことを一から教えるとなると3か月くらいはかかる。しばらく出走回数は減ってしまうけど、こればかりは仕方がないな」
小学校で必要とされる文字や簡単な計算まで幼稚園の時期に覚えさせてしまう。各トレセン近くにある大手の育成牧場を人間で例えるならこんなところか。競走馬の場合は人間以上に“旬”とされる期間が短く、その点で早期教育自体は間違っていないのだろうが、それがすべての競走馬に合うわけではない。少なくとも坂口厩舎は牧場との付き合いを重ねていくことで2歳戦でも一定の結果を残し、GIも勝ってきた。育成方針、調教方法に多様性があるからこそ、POGも競馬も面白いと記者は考えている。指名馬の賞金争いだけに注目するのではなく、その過程も様々なのだということをPOGゲーマーに知っていただけると幸いだ。
◆松田博厩舎最後のクラシックへ「毎日杯で賞金を加算してから次を考えた方がいいだろ」
さて、土曜(28日)には皐月賞への“最終便”となるGIII毎日杯(阪神芝外1800メートル)が行われる。先週の若葉Sが1勝馬によるワンツーだったことで、賞金のボーダーラインがグッと上がり、このレースからクラシック出走を狙う陣営にとってハードルはかなり上がってしまった。おそらく本賞金1900万円前後が最低ラインになりそう。2着でなんとか…のレベルはアッシュゴールドら賞金持ちくらいで、1勝馬はもちろん、2勝馬でも勝たないと出走ラインには到達しない。この例年になく厳しい一戦に中1週で臨むアルバートドック。今週はこの馬に注目していただきたい。
松田博厩舎が毎日杯を使うのはなかなかないよな…と思って調べてみると、予想通りでわずかに4回。最高成績は1999年、あのテイエムオペラオーの2着に入ったタガノブライアンだった。
「押せ押せで皐月賞(15着)に出走させたが、その時のダメージで長く休むことになってしまったからな」と後悔を口にした松田博調教師。それだけにこの詰まったローテーションは気になるところだが、アルバートドックについてはまったく問題ないようだ。
「前走(ゆきやなぎ賞1着)前にひと息入れていたし、これで青葉賞まで待つとなれば間隔が逆に空き過ぎる。それなら毎日杯で賞金を加算してから次を考えた方がいいだろ。馬も一度使ってシャキッとしてきたからな」
名伯楽にとって今年の3歳世代が最後のクラシック。前走の末脚が見せられるようなら…ダービーへの突破口も見えてくるはずだ。