あえてここを選ぶ確かな手応え、ラインスピリット/トレセン発秘話
◆松永昌調教師「この馬は逃げた時の方が明らかにいい結果が出ている」
「適鞍があるのに、なぜこっちのレースを使うのか?」
そんな陣営の采配を見かける時がたまにある。その裏には確固とした理由が存在すると同時に、確かな手応えがあるものだ。最たる例はオークスではなく日本ダービーに挑戦し、64年ぶりの牝馬によるダービー制覇を成し遂げた2007年のウオッカだろう。
ここまで1200メートルで全4勝を挙げ、前走のオーシャンSでも4着と一応の結果を残したラインスピリットの場合は、高松宮記念に特別登録すらしなかった。獲得賞金が少ないから出られないとみた? いやいや、そういった理由ではなかったようだ。
「この馬は逃げた時の方が明らかにいい結果が出ている。1200メートルの重賞クラスになると、なかなかハナには行けない。それなら距離を延ばした方がいいだろう」とは松永昌調教師。
高松宮記念には見向きもせずに、GIIIダービー卿CT(4月5日=中山芝外1600メートル)に登録したのは、この馬の勝ちパターンに持ち込みやすいレースを優先したというわけだ。
「デビューからゲートで暴れたり、出遅れたりした時以外、一度も崩れていないからね。それだけ能力を持った馬ということ。1600メートルも2走前に結果を出している(洛陽S2着)。楽に行ける分、かえっていいんだと思う」(松永昌調教師)
フルゲート16頭の枠に出走決定順15位タイでエントリーできたのはツキがある。加えてこれといった同型馬も不在で風は確実にこの馬に向いている。
「ハンデ(55キロ)は予想より背負わされたけど。まあ、それだけ評価されたってこと。状態もいいので面白いと思うよ」
所属騎手の森一馬を乗せての東上。これまでマジェスティハーツで重賞2着2回がある松永昌師&森の師弟コンビに、そろそろ悲願を達成してほしい。そんな願いも込めて応援する次第だ。
(栗東の坂路野郎・高岡功)