皐月賞に“出てこなかった”2頭の逆襲に注目/吉田竜作マル秘週報
◆松田博師「この馬が本当に良くなるのは、もっと先。来年俺が引退してから走ってくれればいいんだ」
牡馬クラシック第1弾・皐月賞は、まさかのフルゲート割れが確定的になった。「今年の牡馬クラシックの賞金ボーダーは例年以上に高い」と強調してきた当コラムとしてはバツが悪いのだが、一応の言い訳をしておくと、事前にエージェントや専門紙記者などを使ってリサーチした上で「今の賞金では登録しても出走できない」と判断したキュウ舎が多かったため起きた現象のようだ。
惜しいと感じずにはいられないのがポルトドートウィユ。若葉S4着後に放牧に出てしまったが、そのまま在キュウしていれば…。桜花賞を取り消した母ポルトフィーノもそうだが、どうもこの一族は春のクラシックに縁のないイメージが強い。フィジカル面というよりも、「血」がそうさせてしまうのではないかとまで考えてしまう。
一方、「ラストクラシック」となる松田博キュウ舎は、牝馬も牡馬も第1弾は見送ることになったものの、オークスとダービーに向けての準備は着々と進めている。その中でも一番の有望株はレーヴミストラルだろう。勝ち上がりに3戦を要したため、オーナーサイドとの協議の上で未勝利戦勝ち後にノーザンファームしがらきに放牧。じっくり英気を養った復帰初戦のアザレア賞(500万下)では最後方から直線だけでライバルを一蹴し、潜在能力の高さを存分に見せつけた。
あとは5・31日本ダービーに向けてどのようなアプローチをしていくか。松田博調教師といえば「関西馬が青葉賞を経由していてはダービーは勝てない」と過去に何度となく発言していただけに、この東のトライアルだけは避けるのかと思いきや、青葉賞でダービーの出走権を取りに行くことに。果たして名伯楽の真意とは?
「この馬が本当に良くなるのは、もっと先。来年(2月いっぱいで)俺が引退してから走ってくれればいいんだ。前走だって勝ったのはいいが、道中は頼りない走りだっただろ? これでもだいぶ良くなってはいるんだけど、まだまだトモが甘い。そこさえ良くなってくれば相当走るはずだよ。だから(無理をしない範囲の)今の力でどこまでやれるか。もちろん、出すからにはチャンスはあるだろうし、通用していいだけの素質は持っているからな」
長年「マツパク番」として過ごしてきた身としては、あまりの無欲さに「最後のダービーなんだから」と、もどかしく思えるが、タイトルや自分の名誉よりも、馬そのものを大切に考えるのが松田博調教師「らしさ」でもある。馬一筋に生きてきた男に、競馬の神様が粋な計らいをしてくれないものだろうか。
今年の皐月賞出走馬のレベルの高さは百も承知だが、縁がなくて出走できなかった、あえて出走しなかった馬たちの逆襲もまだまだ可能だろう。特にポルトドートウィユ、レーヴミストラルの2頭の動向には今後も注目していきたい。