先行力があるのは大きな強み
3着までにオークスの出走権が与えられるトライアルを、高い支持を受けた「2,1,3」番人気の3頭が「1-3着」して、オークスの出走権を得た。
このトライアルをステップに、本番で「1-3着」したのは、レース展望でも示したが、この10年間で8頭存在する。とくに今年は、桜花賞組の能力がいったいどのくらいなのか不明なところがあるので、東京の2000を好走したこの3頭はオークスの伏兵になりえるかどうか、例年以上に慎重に振り返る必要がある。
レース内容とは別に、この10年間のオークスで通用したフローラS組は、
▽05年
ディアデラノビア
2分01秒8(2人気1着)→3人気3着
▽07年
ベッラレイア
2分00秒8(1人気1着)→1人気2着
▽10年
サンテミリオン
2分00秒2(1人気1着)→5人気1着
アグネスワルツ
2分00秒4(4人気2着)→8人気3着
▽11年
ピュアブリーゼ
(重)2分03秒3(3人気3着)→8人気2着
▽12年
アイスフォーリス
2分02秒4(2人気2着)→9人気3着
▽13年
エバーブロッサム
(稍)2分04秒0(2人気2着)→5人気2着
デニムアンドルビー
2分03秒9(1人気1着)→1人気3着
本番でも通用した馬は、トライアルの段階から評価が高く、それに応えてフローラSを1-2着した馬ばかり(3着は1頭だけ)。みんな大駆けしてオークス出走の権利を得たわけではないところが共通点である。今年の3頭はレースレベルは別観点として、本番のオークスでも好走できる条件は満たしている。
勝った
シングウィズジョイ(父マンハッタンカフェ)は、内枠を味方に好スタートからスムーズに2番手で流れに乗り、自身は推定「62秒8-59秒0」=2分01秒8の前後半バランス。2番手から抜けてしぶとく我慢しきった。
自身の上がりは34秒3-11秒7。二の足を使って突き放した印象はなく、強いと感じさせる勝ち方ではなかったが、内から
ディアマイダーリン(父ハーツクライ)が接近してきてからが、粘り強かった。スローが味方したのは確かだが、桜花賞が歴史的なスローペースで、トライアルのこのレース全体も、前後半1000mずつの差が「2秒9」もある緩い流れ。今年はこういうメンバーであり、本番で一転、思い切ってレースを作る有力馬でも出現しない限り、先行力があるのは大きな強みになる。
母シングライクバード(父シンボリクリスエス)はこのフローラS5着。オークスには出走していないが、3代母フリートーク(父リアルシャダイ)は、1988年のフラワーCを勝って挑戦した桜花賞を3着。コスモドリームの勝ったオークスは、22頭立ての外枠18番の不利を克服し、0秒5差の4着にがんばっている。輸入牝馬ロイヤルレジナから発展する名牝系であり、一族の代表馬はダイナシュガー。最初はマイラー色が濃かったが、代を経た現在は配されてきた種牡馬から考え、3歳牝馬同士の2400mなら十分にこなせる中距離型だろう。平凡な時計だったとはいえ、東京の2000mをしのぎ切って勝った自信は大きい。十分、オークスの伏兵の資格ありと思える。
2着のディアマイダーリンは、シングウィズジョイをピタッとマークする3番手追走。直線の中ほどでは差し切れそうだったが、相手が思いのほかしぶとかったのか、自身があまり切れなかったのか、数字の上では上がりは勝ち馬を上回る「34秒1」ながら、とうとうクビ差及ばなかった。
だが、本番への見通しは立った。キングマンボ産駒の母オネストリーダーリンは、ゴールドアリュールなどの母として知られるニキーヤ(ヌレイエフ)の5歳下の半妹。父はハーツクライ。近年の活躍馬にもっとも多いパターンであるノーザンダンサーの[5×5.5]。勝ったシングウィズジョイと着差「クビ」が示すように、ほとんど互角の力量を秘めるオークスの伏兵だろう。
この2頭を「クビ、クビ」の差まで追い詰めた
マキシマムドパリ(父キングカメハメハ)は、母マドモアゼルドパリ(父サンデーサイレンス)が、ハシッテホシーノの4分の3同血の姉。センスあふれる注目の牝馬は、マークした2頭を上回る上がり「33秒9」。レース内容は先着を許した2頭にまったく見劣らなかったが、問題はギリギリに映った馬体か。2歳11月のデビュー戦が「470キロ」。あれから5戦連続して減り続け、今回はさらにガクンと18キロ減。とうとう「432キロ」になってしまった。未知の距離2400mを前に、約5ヶ月間で38キロ減。絞れたとはいい難い。赤信号だろう。
今年のオークス、桜花賞組は負担がかかるほど走っていないから、おそらく元気いっぱいのはずである。フローラSの上位馬もこのスローだからマキシマムドパリ以外、反動はない。しかし、能力比較のベースになりそうなのは路線の中のどのレースなのか。オークスが近づくほど、見えなくなってしまった難しさがある。