史上2番目の好時計
自身満々に後方にひかえて進んだ3番人気の
ミッキークイーン(父ディープインパクト)が、史上2番目の好時計2分25秒0で快勝した。
レース全体は前後半の1200m「1分13秒9-1分11秒1」=2分25秒0。かなりゆったりしたバランスで展開したが、好時計になる下地はあった。直前の古馬1600万条件の芝1400mは「前半35秒3-47秒0→」の超スローにもかかわらず、後半にハロン10秒台も含む「33秒4」の高速ラップが記録され「1分20秒4」。スピードと、鋭い切れがフルに発揮できる芝コンディションだった。
前半は後方5-6番手で脚をためたミッキークイーン(浜中俊騎手)は、人気の
ルージュバック、
レッツゴードンキを射程に入れながら、3コーナーで中団まで押し上げると、早めにスパートした
クルミナル、ルージュバックを目がけて、自身の後半1000mは推定「57秒5-45秒6-34秒0-11秒6」。あざやかな差し切り勝ちだった。
初遠征となった2月の「クイーンC」では、調教強化と初の輸送競馬が重なり、いきなり444→424キロの馬体減。それもあって2着にとどまり、桜花賞出走当確の賞金加算に失敗したが、そのあと陣営の苦心の調整が見事だった。桜花賞を除外されて快勝した「忘れな草賞」快勝が426キロ。今回の馬体重は430キロ。細身でも、ギリギリに映ったクイーンC当時の線の細さは消えていた。
レース前の落ち着き払った気配から、絶好の仕上がりを確信した浜中俊騎手は、ミッキークイーンの最大の持ち味である父ディープインパクトゆずりの切れを存分に生かす騎乗ができた。当面のライバルを終始射程内に入れて追走できたから、落ち着いた流れはミッキークイーンにとっては歓迎だったと思える。
「忘れな草賞」をステップにオークスを制したのは、1994年チョウカイキャロル、1998年エリモエクセル、2011年エリンコートに続いて4頭目。秋には、当時は3歳限定だったエリザベス女王杯でヒシアマゾンと「ハナ差」の接戦に持ち込んだチョウカイキャロル。のちに重賞を3つも制したエリモエクセルと同じように、夏を経てまたさらにパワーアップして欲しい。アメリカ→フランス→日本と移ってきた牝系ファミリーに、日本で知られる近親馬はいないが、母は仏G2ドラール賞(1950m)の勝ち馬。その4代母の孫に、ダイユウサクの父として知られる輸入種牡馬ノノアルコ、同じく弟のストラダビンスキーがいる。
桜花賞に続いて1番人気になったルージュバック(父マンハッタンカフェ)は、今回は桜花賞とは違って最初から好位追走。外枠のためか心もち気負ったような追走になり、「負けられない」立場とあってスパートも早かったかもしれないが、同じように抜け出しかかったクルミナルとは半馬身差の接戦であり、これは仕方がない。早めのスパートになるのはクラシックの1番人気馬の定めのようなもので、脚を余して負けるわけにはいかない。ミッキークイーンに、自分と互角か、あるいはそれ以上の能力(切れ味)が秘められていたことを、少なくとも今回は受け入れるしかない。
自身の上がり3ハロンを34秒5でまとめて、2分25秒1。あのままミッキークイーンがこなければ史上2位の走破タイムで勝っていた。少しも評価が下がる内容ではない。
クルミナル(父ディープインパクト)は、ゲート入りに大きく時間を要し、6月14日まで出走停止(発走調教再審査)。先にゲート入りしていた馬に大きな負担を強いてしまった。自身も大きなロスがあったはずだが、外枠17番から果敢に先行して0秒2差の3着は、桜花賞でも苦しい位置から2着に突っ込んだ地力を改めて示した。今年デビューして今回が5戦目。秋には大きく成長するだろう。ただ、ゲート入りを嫌がって他馬に迷惑をかけるのは、3歳牝馬でもあり仕方がないが、これはみんなにとって大事なクラシック。気が抜けて出負けした馬もいた。3着を悔しがる前に、ファンと他陣営にお詫びのひと言でもあったらもっと好走が光ったろう。
各馬ともに追走の楽な流れだった。とくにスタミナ能力を問われたわけではないが、3頭の攻防から2馬身以上の差が生じてしまった4着以下の各馬は、ゴール寸前になって突っ込んできた
アースライズ、
アンドリエッテを含め、現時点では総合力もう一歩だったか。「上がりの速いレースになったから届かなかった」という敗因は成立しにくく、2400mのレースが後半1000m「58秒6」になっても、やっぱり問われたのはスタミナであり、総合能力だった。
2番人気の桜花賞馬レッツゴードンキ(父キングカメハメハ)は、この枠だから下げる手はなく好位のイン追走となったが、残念ながら流れの落ち着いたところですぐかかってしまった。気分良く自分がハナを切った桜花賞とは別のレースになったとはいえ、もともと主導権をにぎることはなかった馬であり、レース前は落ち着いていた。スタンド前の発走で気負ったのかもしれない。あれだけ行きたがっては2400mはもたない。ただ、距離に死角があったのは事実でも、今回はスタミナ不足で伸びを欠いたという以前の自滅だった。「1番枠を引いた馬は勝てない」「桜花賞勝ちが単勝オッズ10倍以上だった2冠馬はいない」という、半世紀以上も続くオークスの2つのジンクスに魅入られてしまった。
ココロノアイ(父ステイゴールド)は、いかにもステイゴールド産駒らしく、落ち着いているように見せながら急にいらつき返し馬でカーッとなりかけたり、逆にレースではおとなしくなり過ぎたリ、本物になるにはもっと時間が必要なのだろう。切れ味負けとは違うように思えた。
コンテッサトゥーレ(父ディープインパクト)、
クイーンズリング(父マンハッタンカフェ)は、前者はルメール騎手、後者はデムーロ騎手のコメントにもあったが、少なくとも現時点では距離2400mが長すぎた印象が強い。